「本当に…どうしたもんかね…」


俺は思わず、困ったように笑う。

シャイニング事務職の寮の一室、自身の寝室のベッドに身体を沈めていた。
困らせているのは紛れもなく、腕の中ですやすやと眠る、愛しい愛しい、彼女。

卒業オーディションが行われたあの日。早乙女学園の寮にハニーを連れ込んだ、あの日。
彼女を組み敷いたが、結局事には及ばなかった。愛しい人を自身の腕の中に閉じ込めて、それだけで全てが満たされていくようだったから。ただ、心地好さに酔いしれた。


だが、今は。


柔らかな髪をゆっくり一撫ですると、気持ちがいいのか、背中に回るか細い腕に若干ながら力が隠る。少しだけ、更に近付いた距離。
胸板に擦り寄ってくる様子に、ああ、甘く飼い慣らされた仔猫みたいだ。そう思った。

無防備すぎる彼女に内心心配しながらも、己の雄としての感情が浮上するように沸き上がってくる。
じわり、じわりと。身体が熱くなってきた。


触れたい。
触れたい。
触れたい。もっと。


無意識に。抱き締める手がパジャマ越しの柔らかい身体を撫でていた。


「……、んっ」

「……っ」


聞きたい。
その甘い声を、もっと。


ひとつ手に入れると、またひとつ、手に入れたくなる。
ハニーの心を手に入れたと思ったら、次は。


知りたい。
彼女の全てを。


思わず、はあ、と漏れる熱い息。堪らなくなって額にかかる前髪を分けて、キスをする。熱情を含んだリップ音が静寂に溶けた。


「もっとハニーのことが欲しいって言ったら、君はどんな顔をするんだろうね」


小さな身体をより一層強く抱き締めて、頬を擦り寄せた。







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