「は、るか…」
艶やかな声色で名前を呼ばれれば、びくりと小さな身体が震える。トキヤの大きな手が、濡れた髪を僅かに割り入って後頭部へ。もう片方は緩やかに背中を撫で上げた後、細い腰を自らの方へ引き寄せた。バスタオル一枚越しに、胸が重なる。
どくん。どくん。
感じる重い鼓動は、二人が奏でているものだ。
「トキ…んんっ」
啄む様に、一度唇が触れ合う。次のキスはトキヤの舌がそれを割り入って咥内へと侵入した。
ゆっくりと、綺麗な歯並びを撫でた後、敏感な口腔蓋をしつこく舌先で愛撫してやれば、春歌からは甘い喘ぎが漏れた。
ふと、瞼を持ち上げた濃紺の瞳が、既に意識がキスへと移り溺れる彼女を捕える。
「ふ、ぁ……!やっ、…」
くたりと身体から力を抜けたところで、待ってましたと言わんばかりの早急な所作で、バスタオルを剥ぎ取った。
「あぅ…ずるい、です…バスタオルは許すって言ったじゃないですか…」
「何をいってるんです。最初だけに決まっているでしょう。これでは身体を洗えませんから。…それにしても、」
トキヤの腕に更に力が入り、小さな身体をきつく抱き締める。
「久しぶり、ですね。こうして触れ合うのは」
――すごく、興奮します。
既に頭を持ち上げ、熱を帯出した自身を、直ぐそこの春歌の密部へと布越しに押し当てる。
「っぁ…」
「判りますか?…君があまりに可愛らしいものですから…もう、こんなに、」
触れ合った部分を擦るように、彼の腰がゆるりと揺れ出した。
時折故意的に陰核を強く擦れば、トキヤの背に回る手に力が入り、ぴりりと小さな痛みが走る。が。それすらも容易に快感へと変化し、形の良い眉が僅かに歪んだ。
一方、春歌は。絶頂を迎えたくともなかなか其処までは到達しない。それどころか、その前にトキヤは動きを止めてしまった。
「…何です、そんなに物欲しそうな顔をして」
「しっ、してません!」
「心配しなくてもちゃんとあげますよ。…ただ、一番の楽しみは最後に、ね」
額にキスを贈ると、トキヤは春歌を立たせる。あっさり身体を反転させて、今度は後ろから抱き締めた。
徐に両腕が伸び、その先の掌にボディソープが出された。春歌の目の前で両手が擦り合わさり、ボディソープが絡まっていく。
「…あの、」
「どうかしましたか?」
「ス、スポンジとかは…使わないんでしょうか…」
「要らないでしょう、そんなもの」
「ひっ、あっ!」
ぬるり。
両肩にもどかしいような感覚が走った。肩から肘、肘から手首。両手を絡ませ合った後、背中を滑る。
そして両手は、前へ。
丹念に腹部を擦ったそれは、上へと移動し、控えめな膨らみを包み込んだ。断続的に漏れていた甘い吐息は、声に変わる。
色付いた突起を挟み込むようにしてゆっくり揉みしだかれる。
「や、ぁっ…そこ、ばっかり…」
「よく洗わないといけませんから…それとも、」
――もう、下がいいですか?
きつく閉じられた両足も、ぬるついた右手を拒む事は出来なくて。春歌の内腿に滑り込んだそれは容易く陰部を捉え、翻弄する。
左手が足を撫で上げ、清めながらも、右手の動きは止まらなかった。
「あっあっ…っん」
締め切られた浴室に響く声。抑えたくとも、抑えられない。
その自らの淫らな声も、耳元に降ってくる荒い息も、割れ目を撫でる指も。全てが春歌を翻弄して。気付かぬ内に腰が控えめながらも揺れ出していた。
それを捉えた捕食者の眼。満足そうに細められ、口角を上げる。そしてその唇が捕えたのは、目の前で赤く染まる耳殻。くちゅり、と、甘い音がより一層春歌の聴覚を支配する。
「困りましたね。どんどん溢れてきて、切りがない」
「はぁっ…ぁっん」
「…いっそ蓋でもしてしまいましょうか」
「ふ、た…?」
「ええ。君のココにぴったりですからね、私のは」
「あっ、ぅ…」
先程から僅かに触れていたトキヤの熱い塊が、ぐっ、と強く丸い尻に押し当てられて、思わず背中がしなる。
「ねえ、春歌…」
ぐちゅり。
身体の中心で卑猥な音が立てられて。
「欲しいですか?」
耳に直接注がれる声が脳髄を痺れさせて。
「答えて…」
羞恥だとか。
理性だとか。
頑なに守っていたものが、がらがらと音を立てるように。所謂、崩壊。
「…ほ、……しい、です…」
「…ん。よく出来ました。ですがその前に、」
――君も、してくれますよね?
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