※アニメ設定
(そんな描写ないけど)みんなちょっとずつ春ちゃんに惹かれているよ!
ちりちり。焼けるように。
じりじり。焦げるように。
ふつふつ。沸き上がるのは…
オーバーライン
「七海は熱心だな…ここでも作曲、とは」
「いいフレーズが浮かんだんだってさー」
ST☆RISHとして活動して一年。人気は急激なほどの右肩上がり。トップアイドル、と呼称しても決して大袈裟ではない。
今日は生放送の歌番組に出演することになっている。
割り当てられた楽屋にメンバーは集まりはじめ、神宮寺レンを除いた五人と、春歌が揃った。
デビュー当時から楽屋に来ることを春歌は遠慮していた。だが、六人が言った。近くにいて欲しいと。近くで見守っていて欲しいと。
まるで、七人でST☆RISH。
「少し長いんじゃねえの」
「…え?」
春歌は楽譜に向けていた視線を上げた。目の前にいたのは来栖翔。
机を挟んで向かい側の椅子に腰を掛けた彼。頬杖をついてまじまじと春歌を見ていた。
何が少し長いのか。それが解らず小首を傾げた彼女に彼は、手を伸ばして一瞬、前髪をさらう。
「前髪、ですか…」
――確かに少し、伸びちゃいましたね。
楽観的にそう言った春歌にため息を一つ。
「お前なあ…そんなんで書き仕事してると目、悪くなるぞ。ほら、ちょっとこっち向け」
長机に身体を乗り出して細い指が彼女の前髪を分ける。そして、袖口にとめてあった赤いピンを抜き取った。
「ん。これでオーケー」
トン、と前髪に留めたピンを軽く指先で叩く。
「あ、でもこれ翔くんの大切なー…」
「別に大切ってほどじゃ…沢山あるし、やるよ。
…お前赤、似合うな」
乗り出した身体を椅子に戻して、笑顔を咲かせた翔に、つられて春歌も笑う。
「ありがとうございます」と紡ぐ声の言葉尻が消え、変わりに上がる高い声。
その原因は、華奢な彼女の両肩に突如置かれた大きな手。
白い首を上げて上を見れば、
「レン、さん…」
愛しい人。
だが彼は彼女の方を見やることはなく、真っ直ぐ前を見て、笑った。
「やあ、おチビちゃん」
「レ、レン…」
彼のただならぬ雰囲気に翔の背筋が震える。一気に顔色が悪くなった。
その呼び方に反論する余裕も、ない。
「俺のハニーと、随分仲良ししてるじゃないか」
春歌の肩から手を離して、翔の座る椅子の横に立つ。
いつも以上に見下ろす角度が大きい。
「仲良しっつーか…目!目ぇ悪くなったら可哀想だと思って、だな…」
「で。俺のいない内にプレゼント?油断も隙もないね」
「あああっそんな怖い顔すんなよ!お前が思ってるようなことは何もないっつーの!」
視線に堪えきれず翔はそっぽを向いた。
「レン。それくらいにしたらどうです」
「そうですよぉ。可愛い可愛い翔ちゃんが泣いちゃうじゃないですか」
「いや、泣きはしねえけど……何で抱きついてんだっ!はーなーれーろー!」
後ろから抱きついてきた大きな身体を細腕で押した。
そんな光景をみたレンは呆れたように息を吐く。
そして彼の視線が次に向かったのは。どうしていいか解らず慌てた様子を見せている、春歌に。
「君も、君だよ。ハニー」
「、あ…」
ぐい、と腕を引かれた軽い身体はいとも簡単に立たされる。
向かい合うように立った二人。
大きな手が滑らかな髪をゆっくりと撫でた。
「他の男の前で笑わないで…何てことまで言えないけど…。
他の男からの物を受け取るのは、駄目」
――ピンだって俺が後で買ってあげるから。
先程飾られたばかりの赤いヘアピンが外される。髪が痛まないように、丁寧に。
「もっと、俺のものだって自覚を持って欲しいな」
ほら、返事。そう促されて真っ赤な顔で春歌は肯定の意を示した。
それを見て微笑むレン。しかし彼は、まだ満足した様子ではなくて。
「うん、いい子だ。…ご褒美をあげなくちゃいけないね」
腰に回る逞しい腕。髪に埋まるように後頭部に添えられた骨張った手。
それの意図することに、さすがの春歌も気が付いたのか、非力な力で抵抗する。
「レンさ――、っん」
言葉はキスで呑み込まれる。
舌が絡まって言葉も息も思考も全て、奪っていった。
「、ぁ…だめ…んんっ」
「はあ…、どうして?」
「見られ、…」
「気にしないでいい。春歌は俺だけ見てて…いつもみたいに。俺だけ、感じて」
その言葉で、世界が二人きりになったような、そんな錯覚に陥った。
すっかり手懐けられた彼女に、彼の言の葉はまるで魔法のような効き目を持つ。
深い口付けに、身体から力が抜けて、春歌の全てがレンに預けられた。
ふいに、睫毛に縁取られた蒼眼が覗く。その美しい瞳が映すのは目の前で快楽に溺れる彼女…ではなく。その後ろの五人に。
喉を揺らさずとも、鋭い目が確かに言葉を持っていた。
――春歌は俺のだから。誰にも譲らない。
ガシャン。
誰の手からか、マグカップが滑り落ち、破片が散り散りになった。
一万打フリーリクエスト/アリスさん
「レンが他のプリンス達に口説かれている春歌に嫉妬」
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