「前付けたものは、さすがに消えてしまいましたね」
服を開いて覗く胸元に喉が鳴る。
堪えきれず白い肌に喰い付いた。
音を鳴らすように吸い付き、離れた頃には赤い痕が残されていく。
平行するように春歌の上半身に纏う布を剥がしにかかった。
ふと、トキヤの眼が彼女の足元を見た時。物欲しげに擦り合わされる膝を視界に捕えた。
だが、今は見ないふり。今夜は彼女をゆっくり味わおうと。
胸の飾りに熱くなった舌を当てれば春歌の腕がトキヤの頭を抱え込む。
空いたもう片方の手で、もうひとつの膨らみを揉みしだいた。
「あっあっ…っ!ひ、ぁっ」
「胸、また大きくなりましたか?」
たっぷり唾液を蓄えて、舐め上げる。強弱をつけて吸い上げれば嬌声が上がった。
「う、ぁん…は、…あっトキヤ、くんっ」
「何です?」
「もう、…ああっ!…ん、早く…」
揉んでいた手を下にゆっくり移動し、薄い腹を撫でるように遊ばせる。
「春歌、ちゃんと言わないと解りませんよ」
「あっ、…早く、下も、…触って、くださ…」
恥ずかしがり屋の春歌の希求にどくりと脈打つ。
焦らして焦らして、それでもいつも顔を真っ赤にして快感に耐え抜く彼女に、トキヤは少々不満だった。
いやらしく希求し、喘ぐ春歌が見たいと、切に願っていたのだ。
それを叶えたのは、紅茶。ではなく。中に仕込んだ液体状の媚薬。
ロケで一緒だった神宮寺レンに「子羊ちゃんともっと気持ちよくなりたくはないかい?」とそそのかされ、握らされたそれ。
疑い半分だったものの、確かに効果はあるようだった。
「…ねえ、春歌。指と口、どっちがいいですか?」
「ぁ、う…」
「春歌…」
熱い吐息と共に耳元で囁いてやれば、
「く、ち」
ゆっくりそう答える。
それと同時にトキヤの腰が甘く熱を持った。
ぼろぼろと溢れる涙を舐め上げて、目尻にキスを落とした。
「んっ。よくできました」
いやらしくて、可愛いですよ。
そう言えば大袈裟なまでに震える小さな身体。それに口元を緩めながら彼女のスカートと、下着を脱がせた。
春歌の両足を、彼女の胸につくほど持ち上げ、開かせる。その際柔らかい太股に沈む、大きな手。
トキヤは密部に顔を近付け、ふっと息を吹き掛ける。それだけで春歌は身を捩った。
「や、あ…んっ…っ!あっ!ああああっ」
唐突に唇で触れ溢れ出た蜜を啜るように口内へ導く。
その際彼の高い鼻が故意的に陰核を擦り上げた時、春歌は呆気なく達した。
トキヤは身体を起こし、彼女の顔を見下ろす。快楽に溺れた表情をみて口角が歪んだ。
「おや。もうイってしまったんですか」
「あ、う…トキヤ、くん…」
ふいに力のない手ががっしりした肩を押す。彼女は何も言わないが、座れということだろうかと、トキヤは勝手に解釈し、身体を起こした。
彼女もそれを望んでいたらしく、満足げに日だまりが細められた。
春歌も身体を起こそうとするものだから、背中を支えて手伝ってやる。
徐に。震えながら伸びてきた両手。片手が彼のベルトを掴み、もう片方の手が布越しの高ぶったモノを優しく撫でた。
「……っ!」
ゆっくり。でも確実に開かれていく。やがて顔を出した性器に顔を近付け、はあ、と熱い息を吐いたかと思うと、口に含んだ。
「っ!…ぁっ…春、歌!」
はじめてだった。
舐めてくれないかと頼んだことはあるにはあった。だか触ることすら出来ず怯えた様子の春歌に、内心寂しくも、トキヤは諦めた。こういう行為を。
だいすきな彼女に無理強いは出来なかったのだ。
鼻から抜けるような吐息。根元を握る手。
覚束無い動きで必死に舌を絡める彼女。決して上手いものではなかったが、今のトキヤを追い詰めるには充分だった。
「春歌…っはあ、…出ます、からっ」
――離れてください。
春歌の頭に手を添えて離れるように促した。
それに首を振って拒否を訴えた彼女にまた熱を持つ。
トキヤの先端をじゅっ、と熱く吸い上げた時、ついにそれは弾けた。
「――っぁ、…くっ」
「ん!…む、ぅ」
口内で受け止めた春歌が眉間に皺を寄せて離れていく。含みきれなかった白濁色のトキヤの体液が口元を伝う。
苦い顔をする彼女に彼はベッドサイドからティッシュを引き抜き差し出す。
「…だから言ったんです、離しなさいと。ほら、出しなさい」
またも春歌は首をふるふると横に動かす。そして。
こくん、と喉を鳴らし嚥下した。
「んっ…はあ、」
汚れた春歌口元を、トキヤは親指でなぞるように拭ってやる。
「……春歌」
交差する二人の視線。
どちらからともなくキスを交わし、二人の身体はやがて、寝台へと沈んだ。
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