「明日はオフになったんです」
ドラマのロケで長らく寮に帰って来られなかったトキヤ。彼が今日、帰還した。
食事を取った後、白いソファーにぴったり寄り添って腰掛る。
ローテーブルにはトキヤの入れた紅茶の入ったティーカップが、これまた仲良く並んでいた。
そのひとつを白く長い指が捕えて、口へと運ぶ。
「本当ですか?」
「ええ。君は、どうなんです?仕事の方は」
「昨日一段落したところなんです!次のお仕事もまだ日がありますし」
「では、明日は二人でゆっくりできますね」
「はい!」
小さな両手がティーカップを取る。
こくり。
白い喉が小さく上下する。紅茶を嚥下した春歌を見て、トキヤは薄く笑った。
春歌のティーカップの中身がなくなった頃。
彼女の様子がおかしくなった。
時折ぴくりと身体を震わせ、息が少々荒くなる。
「…春歌?」
「あのっ…私……体調、悪いみたいで…」
俯いた彼女の顔を覗き込むように見てみれば頬が紅潮し、瞳は潤んでいた。
「ああ、やっと効いてきたみたいですね」
「効…?」
大きな手が腰を抱き、もう片方の手で頬を包む。春歌の熱がトキヤの手へと、伝わっていく。
唇が触れ合う。
彼の舌がノックするように前歯に触れると、うっすら口を開いた。その隙間に遠慮なしに滑り込み、彼女の舌に自分のそれを絡める。
「んん…ふ、ぁっん」
「ん…っは、」
脳髄まで蕩けるような、深いキス。
何度も何度も角度を変えて啄まれ、息をつく暇もまるでない。
春歌が震えながら、力なんてまるで持たない手でトキヤの胸元を押すと、ようやく離れた。
刹那、ふたりを繋ぐ銀色。
全身が弛緩した春歌はトキヤに身体を預ける。
「随分気持ち良さそうですね」
「はぁ…っぁ、何か…おかしくて……あつ、い…」
「…ベッド、行きましょうか」
背中と、膝の裏に手を当てて火照った身体を容易に抱き上げた。
階段を登った先の寝室。
戸をゆっくり開け放てば、窓硝子から射し込んだ月光が淡く照らしている。
ゆっくりとした所作で、春歌を寝台に寝かせ、自らも覆い被さるように乗り上げた。
二人分の重みで軋むスプリングが妙に生々しく聞こえて。
再び触れ合う唇は先程より何倍も、熱かった。
「トキヤ、くん…」
するりと首に巻き付けられた細腕にトキヤは目を丸くする。
そして、
「…早く……トキヤくんが…欲しい、です」
一言で理性はぷっつりと、切れる。
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