※表向きHAYA春







彼女が欲しかった。でも彼女がの瞳に映るのは、もう一人の私、という名の別人。私は彼が嫌いです。でも、彼女が愛してくれるのならば…。

収録があるんだけど、良かったら見学に来ない?仮初の姿でそう誘えば。七海くんは花が咲いたように笑みを溢して、さぞ嬉しげに肯定の返事をした。それだけで心がちくりと痛む。収録を終えた後の、楽屋。音楽番組の収録現場の余韻を残し、少々興奮気味の彼女を壁と腕の間に捕まえて、犯した。
「HAYATO様」、と、そう呼ぶ時の彼女は。頬を赤らめて、少し俯いての上目遣いだったり、満面の笑みであったり。だが今日この時。本能が危険を察知したかのような粟立つ表情を初めて見た。

七海くんの口を左手で塞いで、両手を壁に付けさせたまま後から、狭い膣を穿った。軈て慣れてくれば、じゅくり。粘膜が鳴いて、繋がった場所からどちらとも判らない体液が溢れる。空気を含んで泡立ったそれは、うっすら赤が混合している。血の色だ。これまで何も受け入れて来なかったそこの膜が損傷した証。


「ふっ…ん、んんっ」

「っ、はあ。……ね、春歌ちゃん…きもちい?」


下半身を密着させて全てを埋め込み、揺さぶってやれば一層濡れた襞が肉棒に絡まる。その感覚に雄は更に膨張して膣内で暴れた。


「…っ、ん!…、ん…んんっ」

「くっ…ぁ、…は、るか…ちゃんっ…――、え…?」


何度も腰を打ち付けて、いざ熱を吐き出さんとする時。漸く気付いた。左手が濡れている。思わず左手をじっと見た。それと同時に解放された口が溢したのは、


「…けて……ひっ、く………たす、て……ちの、せ、さ…っ」


助けて。一ノ瀬さん。
途切れ途切れでも、確かに聞こえた。鼓膜を揺らした刹那、高揚していた気分は一気に冷却される。細腰を抱えていた右手を弛めて、思わず一歩退けば、ひとつだった身体はふたつになる。支えをなくした七海くんはぺたりと床に座り込んだ。

思考は、ぐるぐると迷うように回っていた。

彼女はHAYATOを「一ノ瀬さん」とは呼ばない…。私の正体がHAYATOだと気付いて…?いや、そんなヘマをした覚えもありません、などと考えが廻って、そして、最後の答えは…。
今だって。縮こまった身体を自ら抱き締めるようにして震えながら、一ノ瀬さん、と何度も譫言のように連呼している。こんな状況で呼ぶ名前なんて、知れているというのに、上手く思考と現実が直結してくれなかった。


私は、何処から、何時から間違えていた?





十万打フリーリクエスト企画/由仁さん
「トキ春で狂愛」




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