!2012.9月の拍手ログです。


8月が明けて新学期。
まだまだ暑さは続くが「せんせい!せんせー!」とまとわりつきながら、夏休み中の出来事を嬉しそうに話してくれる園児たちに、土井教師も自然と笑顔があふれた。

「あのねぇ、どいせんせー。これみてなの」
「ん?どれどれ」
「なつやすみのしくだいなのよ」

いさが差し出したのは、スケッチブックだった。表紙には「えにっき」と書かれた色画用紙が貼り付けられている。

「とめちゃとかいたのー」

幼稚部にこれといった宿題は無い。
朝、今生の別れのような顔で去って行った留三郎から渡された連絡帳によると「いさが夏休みの宿題を羨ましがるので、二人で絵日記をつけました」だそうだ。

「そうか、あとでゆっくり見るからな」
「えへへー」

いさの頭を撫でてやると、今日のおうたを歌うべくオルガンへ向かったのだった。


さて、園児たちも帰った夕方。
土井教師は「せんせいのおへや」の自分の席で、ゆっくりお茶を飲みながら絵日記を開いていた。

どうやら、いさが絵を描いて留三郎が2、3行コメントをつけているらしい。たまに「の」がひっくり返ったいさの字もあって微笑ましく見ていたが、段々ページをめくるスピードが遅くなって行った。

「……」

『今日から夏休み。ずっといさと一緒に居られる。いさが可愛い』
『今日はいさが起こしてくれました。朝見るいさは、天使のようです』
『いさのために浴衣を縫いました。天女のような可愛らしさです』

その浴衣の二人の写真が貼ってあり、コメントが添えてあった。

『いさの母でございます。本当にお似合いの二人で、将来が楽しみです』
『らぶらぶだよ!』

どんどんと無言でページをめくり、土井教師は最後に大きくひとつため息をついた。

「……交換日記を見せられた気分だ」

彼は胃をさすると、無言で引き出しから「よくできました」シールを出して貼ると赤ペンでコメントを書いてやったのだった。

『とても楽しい夏休みで良かったですね。これからも二人、仲良しでいましょうね』

それ以外、何を書けというのか。


・・・・・
土井先生を困らせて楽しい。私が。





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