薄紅色に染まる想い(1/2)
深夜、ベランダに通じる窓からわずかな月明かりだけが差し込む室内。
寝室のベッドに横になった俺は、隣で穏やかな寝息を立てるみのりの顔をそっと覗き込んだ。
「ん……」
額に落ちた前髪をそっとかきあげてやると、みのりはわずかに身じろぎをする。
彼女の体にそっと上掛けをかけ直してやりながら、俺は小さく笑った。
純真無垢。
初めて会った時のみのりの第一印象は、そんな感じだった。
俺とは全く違う世界で、大切に育てられた女の子。
彼女の隣に相応しいのは、春や夏輝みたいなヤツだろうと思っていた。
二人とも、彼女に一人の男として惚れているのは一目瞭然だったからな。
だけど今夜、みのりは俺の腕の中にいる。
そして俺自身も、みのりを手放してやるつもりなんかないし、出来ない。
「‥‥秋羅、さん‥?」
「‥みのり?」
物思いに沈んでいた俺は、みのりが俺の名前を呼ぶ声に視線を巡らせた。
月明かりだけが照らすベッド。
俺の腕の中で、みのりがボンヤリと目をあけている。
「悪い。起こしたか?」
「ううん‥‥秋羅さんも眠れなかったの?」
小さく笑いながら、みのりは俺の顔にそっと手を伸ばしてきた。
頬に触れるみのりの手を握りしめて、そのまま指先にキスを落とす。
「あっ‥‥!」
小さな声をあげたみのりは、上掛けを引っ張りあげて顔を隠してしまった。
「‥‥‥みのり」
「え?‥‥‥あ、んっ‥」
上掛けを剥がして、みのりの唇に強引なキスをする。
つい数時間前に肌を重ねて互いの熱を分け合ったばかりなのに、俺の中にまた欲望の火が灯る。
「んっ‥‥は‥あん‥‥」
みのりの喘ぎ声が、さらに俺の興奮を煽る。
ガキじゃあるまいし、何をがっついてるんだか。
俺の中で、昔の自分が笑っている気がした。
恋愛なんて、“ゲーム“だろ?
お互い楽しんで飽きたらオワリ。
泣いたり傷ついたりなんて、俺はゴメンだね。
(ああ、そうだな。‥‥今だってみのりでなきゃ、ゴメンだよ)
みのりの胸元に紅い花を咲かせながら、思う。
『みのりだから』 『みのりだけが』
俺を、狂わせる。
狂っていたいと願う自分がいる。
繋いだこの手を放せないのなら、いっそ二人で溺れてしまえばいい。
「‥‥みのり」
「あっ‥‥ん‥あき、ら‥‥さぁん‥‥」
俺の手と唇に、どこまでも素直に反応するみのりの体。
数時間前に自分でつけた薄紅色のアザを、今度は甘噛みする。
このアザは、消させない。
愛してるよ、みのり。
→あとがき
.
[←] [→] [back to top]
|