夏色模様〜vol.2〜(1/2)
花火
〜折原 夏輝〜
今夜、久しぶりにJADEと共演した歌番組の収録が終わった後
私は、夏輝さんの運転する車で彼のマンションにお邪魔していた
「にゃあー」
シャワーを使っている夏輝さんを待ちながらベランダで涼んでいると、私の足元に猫のミィちゃんが甘えた様子で擦り寄ってくる
「あ、ミィちゃん‥‥ふふ、おいで?」
「みゃうん」
私は小さな体を抱き上げると遠く、ビルの向こうに広がる夜空を見上げた
ドーン、パラパラ‥‥
ずいぶん距離があるのに、お腹の底まで響く振動がここまで伝わってくる
今夜開催されているのは都内でも有数の花火大会で
漆黒に染まった夜空に赤や黄色、ピンクなど、色とりどりの華が鮮やかに咲いては消えていく
(キレイ‥‥夏輝さんのマンションからこんなに花火がよく見えるなんて今まで知らなかった‥‥)
「ふみゃあ」
そのまましばらく花火に見とれていると、腕に抱っこしていたミィちゃんがもぞもぞと動き出した
「ミィちゃん? どうしたの?」
と私が下を向いた、その時
「捕まえた」
突然、私は背後から夏輝さんの暖かな温もりに包み込まれる
「――っ!? あ、ミィちゃ‥‥」
「みゃーん!」
私の腕から勢いよく飛び降りたミィちゃんは、ひと声大きく鳴くとそのままリビングへ駆けて行ってしまった
「もう、夏輝さん‥‥!」
「はは、ゴメンゴメン」
悪戯っ子みたいな笑顔で笑った夏輝さんの大きな手が、私の髪をそっと梳いていく
「でも、ミィを抱いてるみのりちゃんがあんまり可愛くて、我慢出来なかった――いや、『したくなかった』の方が正しいかな?」
「きゃっ‥‥!?」
言葉と同時に耳たぶを甘噛みされて、更にきつく、きつく抱きしめられた
密着した部分から伝わるお互いの鼓動がゆっくり重なっていくのが分かる
「夏輝さん‥‥あ、あのっ」
恥ずかしさに堪えられなくなって身を翻そうとしたけれど、夏輝さんに私が力で敵うはずもない
「みのりちゃん、駄目だよ? もうしばらく‥‥花火が終わるまではこのままで、ね?」
「‥‥‥‥っ」
耳元で囁かれる甘い言葉と吐息に、私の心も体がなす術もなく溶かされていく
やがてその吐息は耳元から首筋、更に下へと移っていって―――
「好きだよ、みのりちゃん」
「夏輝さん‥‥」
『私もあなたが大好きです』
愛しい恋人の腕に抱かれながら見上げた花火は、今まで見たどの花火よりもキレイだった
夏の夜は甘くひそやかに更けていく―――
―END―
⇒あとがき
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