Precious・後編(2/5)
みのりちゃんと付き合い始めてから分かった事があるんだ
"こういう時"の彼女のちょっと天然な発言は100パーセント照れ隠しだって、ね
そして、お互いの吐息がそっと重なって
「ん‥‥なつき、さ‥‥」
少しだけ性急なキスにみのりちゃんの手が、俺のシャツをきゅっと掴む
そんなささやかな仕種でも、今の俺には理性のスイッチを解除するのに充分だった
「やばい、久しぶり過ぎて止まんないかも‥‥」
はあっと深く息を吐き出しながら、指先でみのりちゃんの前髪を掻き上げると
「そん、な‥‥‥あっ」
みのりちゃんの頬がさっと朱に染まって、身じろぎしようとするのに
素早く彼女の後頭部に手を回して、また―――今度は敢えて強引に口づけた
「大好きだよ‥‥みのりちゃん」
今夜口にしたばかりの、みのりちゃんお手製のケーキより甘い香りのする華奢な首筋を唇でなぞっていく
「あ‥‥やっ‥‥‥こん、な‥‥明るい所じゃ‥‥‥」
「ふふ‥‥そんな可愛い声出したら尚更離してあげられなくなるんだけど?」
「夏輝さ―――きゃっ!?」
二人して折り重なるようにソファに倒れ込む
そして、もうこれ以上無理なくらい近い距離で見つめ合った
『ずっと―――ずっとこうしてみのりちゃんを抱きしめたかった』
声に出さなくても、唇の動きだけで意味を理解したみのりちゃんの瞳が潤んでいく
静かな部屋に響くのは、アナログ時計が時を刻む微かな音だけ
甘い空気が二人を包み込む中、もう一度唇が重なろうとした
―――まさにその時
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