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ぬくもりに染まる夜(2/4)



『でもホント、みのりちゃんだったらいつでも使っていいんだよ? ミィもいる事だしね』



あの後、夏輝さんはそう言ってくれたけど、何となく今まで使った事はなかった



(だって、恥ずかしくてどんな顔すればいいのか分からないんだもん‥‥)




だから今回、サプライズとしてこの鍵を使って夏輝さんのマンションに上がらせてもらい、夕食の準備を整えて、帰宅した夏輝さんを出迎えようと考えたのだ






「えーと、これはここに置いて、と‥‥あ」



出来上がった料理をテーブルに並べていると、リビングに置いていた私の携帯電話からある着メロを奏で出した



『MESSAGE』

夏輝さんと私にとって、大切な‥‥とても大切な曲




――――このメロディが鳴った、という事は



(そっか、夏輝さんも仕事終わったんだ‥‥‥って、え!?)



思わず手を止めて聞き入っていると、玄関の開く音が聞こえた気がして、私は手に持っていたお皿を急いでテーブルに置いて駆け出した



「まさか、でも‥‥」



逸る気持ちを押さえながら廊下に出ると、玄関先に柔らかなアップライトを反射する金色の髪がちらりと見えて



サプライズにしよう、なんて考えは一瞬で吹き飛んだ



「夏輝さん、お帰りなさい!」



「ただいま、みのりちゃん‥‥‥‥っ!?」



振り向いた夏輝さんはすぐにあれっという顔になって、目を見開く



そして、スリッパをパタパタさせながら出迎えに出た私を見て、手にしていたバッグをドサッと床に落とした



「えっと、あの‥‥‥今日初めて、以前もらった合い鍵を使ってみたんですけど‥‥」



「‥‥‥‥‥」



「なつ、き‥さん?」





ふと気が付くと



口許を押さえて目を閉じる夏輝さんは―――心なしか、顔も赤くなっているように見える



「夏輝さん? あの、どうかしたんですか!? もしかして、具合でも悪いとか‥‥‥きゃっ!?」



慌てて駆け寄ると、夏輝さんの肩に触れようとした手を、逆にギュッと掴まれた



(わわ‥‥っ)



その手から直に伝わってくる熱にビクッと反応した私を、夏輝さんがまっすぐに見つめる



「あの、さ‥‥‥みのりちゃん」



「は、はいっ!?」



いつもの夏輝さんとは違う、感情を抑えた声音に私の心がうるさく騒ぎ出す



(ど、どうしよう‥‥‥やっぱり、突然こんな事して迷惑だったとか?)



真っ赤な顔でそわそわする私に、夏輝さんはフッと笑った





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