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味見を味見で甘いキス(1/2)


例え時代が違っていたとしても

この日は1年に1度の大切な日であることに

変わりは無い、から・・・・















「大久保さん、お茶お持ちしました」

「・・・入れ」

襖の向こうからの短い一言に、相変わらずだなぁ、なんて思いながら、襖を開け足を踏み入れ

「ここに、置いておきますね」

机の端っこに、ことんと置いたお盆の上には

極渋のお茶と、小さな茶色の甘いもの

「・・・小娘」

「はい?」

「なんだ、これは?」

「えと、これは、ですね」

バレンタインという風習は、この時代には無いことはわかっていたし

合宿中に皆で食べようと思ってスクバに入れていたチョコだから、可愛くもなんともない至ってシンプルなチョコなんだけど

1年に1度の大切なイベントだから、どうしても渡したくて

「チョコレートと言う、私の時代の甘いお菓子、です」

そろりと様子を伺いながらも、出来るだけ平静を装って告げると・・・

あ、なんか、考え込んじゃって、る?

「・・・小娘」

「は、はい?」

「私はいい、お前が食べろ」

「・・・はいっ?」

せ、せっかく、持ってきたのにっ?

「いえ、あの、大久保さんに食べてもらいたいんですけど・・・」

「お前が食べようと思って持っていた菓子なのだろう?」

だから気兼ねなく食べろ、と言う大久保さんの目は、どこか優しくて・・・

思わず、こくりと頷きそうになるのを、すんでのところで押し留める

「いえ、あの、コレは大久保さんに食べて欲しいんですっ!」

必要以上にムキになって告げると、見つめる先で、ほんの僅かに見開かれる瞳

それもつかの間のことで

すぐに、可笑しそうな笑みへと、姿を変える

「そんなに私に食べて欲しいのか?」

「はいっ!是非っ!」

「そうか・・・」

くつりと、小さく笑う声が耳を掠めたと思ったら

長い指が、チョコレートを摘み上げて

「はづき」

「はい?・・・むぐっ?」

口を開くと同時に、ぽいっと放り込まれて

覚えのある、甘い味が口の中に広がる

せっかく大久保さんに、あげようと思ったのにー!

「お、大久っ・・・」

抗議の為に呼ぼうとした名が、最後まで形を成すことができなかったのは

柔らかいもので、唇が塞がれてしまったから・・・

大きな手に後頭部を押さえ込まれ

すぐ目の前には、真っ直ぐに私を見つめる瞳

柔らかい熱が、口の中を遠慮なく動き回っていて

瞬きと呼吸と、時が、止まる・・・











これでお互いの言い分は叶っただろう

と、にやりと笑う貴方に、翻弄されっぱなしな私は

熱と甘さが残る唇を、手で押さえるしかできない・・・






だけど、大久保さん

翻弄されっぱなしは悔しいから

ホワイトデーには貴方を翻弄してみせますからね

覚悟してて、下さいよ?



〜終〜

⇒お礼文


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