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それもすべて愛ゆえに(2/3)




今だとばかりに彼の懐から逃れた私は、グシャグシャになった頭を手櫛で直していく




「はづき」


と、先ほどまでとは一転して神妙な顔つきになった晋作さんにチョイチョイ、と手招きをされた


(え?何だろう‥‥‥‥ひょっとして、耳を貸せって事かな?)


疑いもせずに近づいた私の耳元で晋作さんがもう一度私の名前を呼ぶ


「はづき」


「‥‥‥‥っ」


彼の吐息が私の耳を掠める感触に、私の体を電流が走り抜ける


一瞬で頬が熱くなるのが、自分でも分かった





そんな私の両肩をガシッと掴んだ晋作さんの目は、ものすごく真剣で



そのまっすぐな視線から目を逸らす事が出来なくなって、私達はしばらく至近距離で見つめ合う




(こ、今度は何‥‥?)


私の心臓は、もう口から飛び出してしまうんじゃないかって思うくらいに高鳴っていた


「あの、な?」


「は、はいっ」














「その笛を最初に吹くのは、出来たら着替えか風呂の時に‥‥はづき?」


「‥‥‥‥‥‥」


私の体が小刻みに震え出したのに気づいた晋作さんを前に、私は黙って大きく息を吸い込む


そして





「晋作さんの、エッチ―――!!」



私のその叫び声は笛よりも遥か、長州藩邸の隅々にまで響き渡ったのだった‥‥‥‥










突然迷い込んでしまった、この場所で

全力で私を受け入れてくれた貴方は、太陽そのものだった

自信家で明るくて破天荒で、そして本当はとても優しい人

その声が、視線が‥‥‥‥貴方の存在すべてが、私を捕らえて放さない


そんな貴方の傍が、今の私のいるべき場所だから

ねえ、晋作さん?

もうちょっと

もうちょっとだけ、お手柔らかに‥‥‥‥ね?




―終―

⇒あとがき
.


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