KAI's Happy Birthday!『花コトバ』(1/2)
午後七時過ぎ。
今日の仕事も全部無事に終えて、私は櫂と一緒に私のマンションに帰ってきている。
2月11日。
今日は櫂の誕生日だ。
大好きな櫂の大切な日だから、心をこめてお祝いしたいと思って少しずつ準備してきた。
「えーと、後はこのお皿を並べて。それから……」
櫂にはちょっとだけリビングで待ってもらって、その間に昨日から準備していたご馳走をテーブルに次々と並べていく。
「ちとせちゃん、大変そうだね。何か手伝おうか?」
キッチンで忙しく動き回る私に、興味津々という感じで顔を覗かせた櫂が言った。
「あー!…ダメだよ、櫂ー。今日は櫂はお客様なんだから、ゆっくりしてて?」
「え〜? だってちとせちゃんのコト見ていたいんだもん」
櫂のストレートな台詞に、私の頬が熱くなる。
「あ、後は冷蔵庫に入ってるケーキを運べば終わりだから///」
「はーい」
照れて顔を真っ赤にしている私を見て、櫂がクスクスと笑う。
(……もう、櫂ってば…)
……こういう時の櫂はちょっとだけイジワルだ。
ようやく料理を全部並べ終えたリビングのテーブルの真ん中に、私は夕べ作っておいたケーキを置いた。
「うわ〜スゴイ! 白桃のタルトだ〜」
甘い物が大好きな櫂が、子供みたいな笑顔になる。
つられて私も笑いながら、櫂の隣に座った。
「櫂、前にカスタードクリーム大好きって言ってたでしょ? だから挑戦してみたの」
「え? ちとせちゃん、あんな昔のコト覚えててくれたの?」
驚いた顔をした櫂に正面から見つめられて、私の鼓動が速くなる。
(覚えてるよ……だって櫂のコトだもん……)
照れ隠しに少しだけ横を向いて。
「……ホントは桃も、花があれば良かったんだけどなぁ……」
ものすごく小さな声で呟いたつもり、だったのに。
さすがプロのミュージシャンと言うべきか、耳ざとい櫂にしっかりと聞かれてしまった。
「……桃の花?……ちとせちゃん、何かコダワリでもあるの?」
「え?……ええっ……な、ない!何にもないよ、櫂の空耳だよ!」
「………………」
思いがけない展開に慌てる私をジッと見つめた後、櫂は突然私を抱き寄せた。
「きゃっ!……櫂?」
ギュッと力を込められて、身動きが取れない。
そんな私の耳元で櫂が囁く。
「ちとせちゃん?……大人しく白状しないとイタズラしちゃうよ?」
「………な、ナイショ」
「ふ〜ん?……そういうコト言うんだ?」
そう言うと、櫂の手が意志を持って動き出す。
「え?……あ、ヤダ……櫂ってば……ダメ……!」
「ちとせちゃんが素直に言わないからだよ?」
「……そんなぁ…」
櫂の体温を全身で感じながら、私は心の中で叫んだ。
(……絶対、櫂にだけはゼッタイに言えないんだってば〜)
桃の花の花言葉。
それは。
『私は、あなたのとりこです』
→あとがき
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