陽の当たる場所〜Session.1〜(2/4)
「まったく、ホンマにアイツらときたら‥‥」
複雑な感情のこもった声音に、俺も思わず苦笑する
だが、リーダーとしてはここはやはりフォローしておくべきだろう
「でも、そのぶん新曲もかなりいい仕上がりになってますよ‥‥練習する度に、俺も驚かされますし」
「‥‥そう、か? だったらええんやけど」
何度か小さく頷いた後、佐藤さんは眼鏡の奥の目に真剣な光りを浮かべた
「せやけど、龍はいつも好き勝手しとるアイツらの面倒を律儀に見とるやろ? それで余計なモン腹に溜め込んだままやと、いつか飯が美味く食えなくなってまうで?」
(美味い飯って‥‥)
佐藤さんらしい例えに、ふっと口許が緩む
自分の気遣いを問答無用で押し付ける訳じゃない
だけど、手を伸ばせば届くこの距離感が心地いい
「ありがとうございます、でも俺は大丈夫ですから」
そう答えると、佐藤さんは寄り掛かっていたソファから勢いよく体を起こして、俺の顔を見上げた
そしてニヤリと人の悪い笑みを浮かべる
「ふーん? なるほどなあ」
「‥‥‥佐藤さん?」
「まあ確かに、毎日ちとせの手料理食うとる龍に限って、それはいらん心配やったかもしれんわな」
「な‥‥‥!?」
意味深な視線とちとせの名前に、顔が上気する
動揺する俺の視線の先で、佐藤さんは小さくガッツポーズをしていた
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