このぬくもりは嘘じゃない(2/3)
「俺は、ちとせと出会って‥‥ちとせが俺の隣にいてくれたからこそ、晋平への負い目から‥‥昔の自分から解放される事が出来たんだ」
龍の指先が、まだ乾ききっていない私の涙をそっとぬぐっていく。
「‥‥‥‥っ!」
「だから俺は、ちとせを一人で泣かせたりしない‥‥‥‥どんな時でも俺がちとせの隣にいる。そう、誓ったんだよ。だから」
俺のワガママに付き合わせて悪いな、ちとせ。
ずるいよ、龍。
そんな事言われたら。
私から龍の腕を振りほどく事なんて出来るわけがない。
「龍‥‥‥‥私、ね‥‥」
一度は止まったはずの涙がまた私の瞳からあふれ出して、言葉が続かない。
龍は、温かい大きな手で私の背中をゆっくりさすってくれた。
一人で何もかも抱え込んで、押し潰されそうになっていた私の心。
ついさっきまで感じていた息苦しさが、龍の温もりに触れただけでどんどん楽になっていく。
龍には、私が必要。 そして、私にも龍が必要で。
今更だけど、一番大切な事。
“ありがとう”
唇だけでそう呟くと、龍は優しく笑いながら顔を近付けてくる。
龍の温もりを唇で感じながら、私の瞳からはさっきまでとはまったく逆の‥‥‥愛しさゆえの幸せな涙がひとすじ、流れた。
→あとがき
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