Musician | ナノ


いっしょに帰ろう?(2/5)



〜雅楽Story〜


開いたドアの向こうに立っていたのは雅楽だった。



雅楽は、私が着替えまで済ませているのを見ると、上着のポケットから車のキーを取り出した。



「佐藤が、今日はこのまま帰っていいっつーからさ。ちとせも支度終わってんなら乗ってくか?」



悪戯っ子みたいに笑う雅楽につられて、私も笑顔になる。



「うん!」



私と雅楽が付き合い始めてもう数ヶ月がたつ。



最近は照れ臭さも大分薄れてきて、二人とも自然に『恋人』として振る舞える様になってきていた。







雅楽の部屋で二人で夕食を食べた後、私は冷蔵庫からある物を取り出して、テーブルに置いた。



「ちとせ、なんだコレ?……って、桜餅か?」



「うん。ホラ、今日は3月3日のひな祭りだからね。たまには、こういうデザートもいいかなと思って買っておいたの」



すると雅楽は、不思議そうな顔をして首を傾げた。



「……ひな祭りだと桜餅?…そういうモンなのか?」



「決まり事ではないと思うけど……」



私は桜餅に合わせてキッチンで緑茶の用意をしながら、続けた。



「ホラ、私達は毎日、それこそ季節とかゆっくり感じる暇も無いくらいに忙しいでしょ?」



……だから、ちょっとしたイベントでも雅楽と二人で過ごせたらいいなって思ったの。



「…………」



背後で、雅楽が息を飲む気配がして。



それから。



私は突然、雅楽に抱きしめられた。



「ちょっと雅楽……危ないってば!」



驚いて体の向きを変えて雅楽の顔を見上げようとすると。



「見んな



と、更にきつく抱きしめられた。



「いきなりカワイイ事言ってんじゃねーよ」



(あ………)



多分今、雅楽の顔は真っ赤になっているだろう。





付き合い始めたばかりの頃は、雅楽の素っ気ない態度やぶっきらぼうな言葉に戸惑う事も何度かあった。



けれど今は、そのツンデレ具合にも大分慣れてきて、逆にそれを『カワイイ』と思ってしまっていたりもする。



(雅楽、今日は“デレ”の日かな……?)



私は心の中で呟きながら、彼の赤い髪をそっとなでた。







→お次は櫂



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