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きみがとなりにいる(2/3)

「‥‥うーん、やっぱりからかわれただけのような気もするけど‥‥ま、いいか」


私が洗面所で軽くメイクを直してから、リビングに戻ると。


「ちとせちゃん、こっちにおいで?」


いつの間にかベランダに出ていた晋平さんが私を手招きしていた。


「あ、タバコ吸ってたんですか?」


「うん、まあそれもあるんだけどね‥‥」


ベランダの手摺りに寄り掛かっていた上半身を起こしながら、晋平さんは空に視線をやる。







つられて空を見上げた私は、思わず息を飲んだ。


「うわ、あ‥‥」


私達の頭上に広がるのは、都内で見られるとは思わなかったくらいの満天の星空。


「秋は一年のうちで一番、星がきれいに見える季節なんだよ」


晋平さんは空から視線を外せないでいる私の肩をギュッと力を込めて抱き寄せる。


「‥‥‥ねえ、ちとせちゃん」


「はい?」


突然まじめな口調で私の名前を呼んだ晋平さんは、私と視線を合わせると優しく笑ってみせた。


「星空なんてスケールの大きいモン見ると、自分が今抱えてる物も何とか出来そうだって‥‥そうは思えないかな?」


「あ‥‥」





目を見開いて小さく呟いた私の体を、晋平さんは思いきり抱きしめる。


「‥‥‥‥晋平、さん」


思わず泣きそうになった私は、俯いてそれをやり過ごそうとした。


けれど、晋平さんはそんな私の顎をとらえて少しだけ強引に上向かせる。


「ダメだよ‥ちとせちゃんの泣き顔も全部俺のモノ、だからね?」


「‥‥っ!」


そう言って私の目尻に触れた晋平さんの唇は、とても優しくて‥‥あたたかかった。






だけど。


「じゃあ、何で最初はあんなイジワルだったんですか?」


「ん?‥‥まあ、ちとせちゃんは俺が隣にいても、なかなか素直に頼ってくれないだろう?‥‥だからちょっとだけ、ね」


「でも動揺してるちとせちゃんも、かなり可愛かったよ?」


「‥‥‥‥‥‥」





→あとがき

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