キスより甘いひとときを(2/3)
もうこれ以上はムリだってくらい真っ赤になったちとせが、ブンブンと顔を左右に振る。
「何だよ。味見してみなきゃ、甘いかどうか分かんねえだろ?」
「う‥‥」
俺の言葉に、ちとせはためらいながらもゆっくりと顔を近づけて、イチゴと俺の指先をそっと口に含んだ。
「‥‥!」
指先にちとせの舌が触れる感触がして、俺の体を寒気にも似た感覚が走り抜ける。
そんな俺に気付いたちとせが、そのままの態勢で上目遣いで俺を見た。
「っっ!!!!!」
先に誘惑したのは俺か、それともちとせだったのか。
気付けば俺は、雑然としたキッチンでちとせの事をきつく抱きしめていた。
「雅楽‥‥ケーキ、作れなくなっちゃうよ?」
俺の胸に顔を埋めて呟くちとせに、俺はわざと意地の悪い口調で言う。
「いいぜ? 作れよ」
「雅楽のイジワル!」
ちとせは、まるで小さい子供みたいに頬をふくらませて俺を軽く睨み付けてきた。
今の俺にはそれすら可愛くて。
「イマサラだろ?」
俺は笑いながら、抗議するちとせの唇をふさいだ。
悪いな、瑠禾。
明日のケーキはオアズケになるかも知れねぇ。
今日は久しぶりのオフ。
二人きりで過ごせる貴重な時間。
ちとせの心だって、俺だけのモンだ。
いいよな、ちとせ?
俺は心の中で呟くと、ちとせの唇にさらに深く口づけた。
☆イチゴの花言葉 『誘惑』☆
→あとがき
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