迎春花(2/4)
二月下旬。
ずっと忙しかった私達が楽しみにしていた、久しぶりの丸一日のオフ。
私と龍は、特に予定を入れずに龍のマンションでノンビリ過ごそうと決めていた。
少し遅い昼食を済ませてから。
今、私達は買い物も兼ねて龍のマンションの近くを二人で散歩している。
この季節にしては暖かい日で。
私達はスーパーで買い物を済ませて帰る途中、小さな公園に立ち寄っていた。
遊具はブランコと滑り台があるだけで、平日という事もあってか他に人の姿はない。
公園の中をグルッと見渡していた私は、ブランコの後ろに黄色い花を咲かせている木があるのに気が付いた。
「ね、龍。あそこに咲いてるのって梅かな?」
龍の上着の袖を軽く引っ張って聞いてみる。
「ん?……あぁ、あれはオウバイだよ」
「オウバイ?」
オウム返しの様に聞き返した私に、龍が説明してくれる。
「“黄色い梅”で黄梅。梅って書くけど本当はジャスミンの仲間なんだよ。ちとせ、ジャスミンは知って、る…だろ?…………な、何だよ、ちとせ」
![](//static.nanos.jp/upload/s/spiralxxx/mtr/0/0/201308042120391.jpg)
何だよ、と言われても。
目を丸くしている私に気付いて、龍が顔を赤くする。
「龍、詳しいね。ちょっと驚いちゃった……花、好きなの?」
そう言うと、龍はなぜか私から顔を背けてしまった。
けれど、龍が顔だけでなく耳まで真っ赤にしているのは、私からもバッチリ見えている。
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