02
side Tokiya
夕暮れ…意外と早く終わってしまった私はレッスン室でボイストレーニングをしていましたが、すべてのメニューを終えてもまだこの時間だった。
玄関の前でため息がでる。
朝は真琴さんがいた手前取り繕っていたけれど、仕事がある日意外は抱き続けている…我ながら大した体力と精神力だと思いますね。…のえるはきっと私と2人っきりでば気まずいでしょうね…
気乗りはしないけれど、出かけるところも思いつかずドアを開けた。
「ただいま戻りました。」
「お帰り。トキヤ、お疲れ様。」
リビングから足音が聞こえて間もなく、のえるがリビングの扉を開けてニッコリと笑った。
「…父は?」
「さっき電話があって…今日は帰れそうにないって。」
のえるが何事もなかったかのように私に話している。
私の心にある何かがチクリと胸を刺した。
「そうですか。」
感情を出さないようにのえると会話する。けれど、のえるはまた「ご飯準備するから待ってて。」とニコッと笑って私をリビングに通したのだった。
また、チクリ…今度はもっと深く。
「…シャワー、浴びてきます。」
「うん、お風呂も沸いてるからね。」
「はい、タオル」と私にバスタオルを渡すのえる。ニッコリと笑顔が絶えない。
それを見て、渡されたタオルを薙ぎ払い、そのまま壁をドンッッッと叩いた。
「そんなに家族が大事ですか…!私はそんなもの、どうだっていい。」
「何…言ってるの。」
「貴女を見ていると、イライラするんですよ。」
私は、また彼女に嫌われることをしています。
それは頭では十分わかっている。けれど、彼女の配慮が余計に私の気持ちを逆撫でするのだった。
困惑した彼女の顔を目の前に、私は今、どんな表情をしているのでしょうか…
「…」
「よく笑っていられますね。昨日あんなに犯されたと言うのに。」
「やめて!!!聞きたくない!!!」
また彼女を侮辱するかのような言葉が出る。
ついに耳を塞いで俯くのえるを見て、私の心の中のモヤモヤした闇がどんどんと濃くなって止まらない。
「…なかったことにしようなんて、許しませんよ。」
そう言って、のえるの腕を取って、ソファに組み敷いた。
ギシリと大きな音が響く。
「トキヤが私のこと嫌いでも構わない。だけど、パパさんとお母さんを悲しませるようなこと、しないで!」
何もわかっていない。本当に…これだけ抱かれ続けてもわからないんですか。
「それは、貴女次第だと思いますよ。」
私はそう言うと、シャツのボタンに手をかけ始めた。
「きゃっ!…トキヤ、やめて…」
「止めてほしいなら父と真琴さんに言えばいい。『弟に犯されている』と。」
こんなにも冷淡に言葉を発して、彼女の反応を期待する。私の期待しない答えが返ってくるとわかっていて…それでも私に従おうというならば、こんな関係でもあった方がマシだ。
「最低…」
「何とでも言ってください。なかったことになど、させやしません。」
潤んだ瞳でのえるが私を睨みつける。そんなのえるを見て背筋がゾクリと震え、嘲笑する私はどうかしているのでしょうか。
乳首を軽く爪で引っ掻くだけで弓なりに弧を描いてピクリと反応するのえるの敏感な身体。柔らかくて手に吸い付くような膨らみを少し強く揉みながら、乳首をぐりぐりと押しつぶしたり、摘んだりして刺激を与えるとプックリと硬く大きくなっていく。
「…っ!ん…ふ…あぁ」
「こんな風に犯されておいて感じているだなんて、最低なのはどっちです?」
「…ぁあ…やぁ、ああ…」
私の口がどんどんのえるを追いつめているであろうことは頭では理解できても、止まる気配はない。止められない思いは更に溢れ出す。
ペロリと耳たぶを舐めて、すぅっと息を吸い込んだ。
「だぁい好きな僕に犯されている妄想でもしてるのかにゃ?」
「っっっ!!!トキヤっ!!!やめて…」
耳元で、いつもより少し高めの弾んだ声。のえるの大好きなHAYATO様。
以前から真琴さんに、娘が大ファンであると聞いていた。いつもステージをキラキラした瞳でじっと見つめているあの彼女と同一人物だと知ったのは、初めて挨拶を交わしたあの日…
「今はトキヤじゃなくって、HAYATOだよっのえるちゃん」
ニッコリと笑顔を見せるけれど、私の腕はするりとスカートをまくり上げ、下着の中に手を入れる。
既に湿った部分を更に指で押し広げ、空いた片手で下着をずらした。
腰を引き寄せ持ち上げて、のえるからも見えるように足を広げた。割れ目に指を擦り付けると、ネチャっと音がして腰がピクリと震える。のえるは耳まで真っ赤にして快感に耐えるように目をキュっと瞑っていた。もっと辱めたくて、わざとクチュクチュと音を響かせながらクリトリスを指で押しつぶすように撫でる。
「あ、んぁあ…や、そこ…ぁあっ」
「ここがいいのかにゃ〜…のえるちゃんのおマンコ、厭らしくピクピクしてるよ〜。ホントに、インランちゃん♪」
「ぁあ、だめ、あぁ…」
腰の動きが快楽を求めるように貪欲になってきたのが見てわかった。
私の与える全てに感じているのえるを見て、優越感に浸って、クスリと笑みが沸く。
「イッちゃう時は、ちゃぁんと「イく」って伝えなくちゃだめだよっ、ね?」
「あ、あぁ、や、イく…イッちゃうのぉ…」
「………いいにゃ。い〜っぱいイっちゃおうね。」
一層大きく弧を描きピクピクと身体全体で反応をしているのえる。あっけなくイってしまった身体を解放する。
そして虚ろな瞳ののえるの唇に軽く自分の唇を触れさせると、立ち上がって床にそのままになっていたバスタオルを拾い上げた。
「…シャワー、浴びてきます。食事の支度をお願いしますね。」
「あの…トキヤ?」
「…なんですか?もしかして、続きがしたい、とか?」
「なっ!馬鹿!違うもん!!!」
急にHAYATOではなくなった私に戸惑っているのか、それとも本当に続きを期待したのかわからない。ですが、ニコッと笑って茶化した私を見て、ホッとした表情をしたのえるは見て取れた。
「そうそう、早乙女学園に入ってもHAYATOとは双子の兄弟と言うことになっていますので、くれぐれもボロを出さないように頼みますよ。」
「わかってるよ。トキヤの夢を壊すようなこと、する訳ないでしょ。」
「…」
さっきまで犯されていたと思えない、この天然というか、タフというか…とても理解に苦しみます。そんなところがとても腹立たしいと言っているのに。
私の夢を壊すような事をしないと真っ直ぐな瞳を向けるのえるを、同じように真っ直ぐ向き返せる勇気は私にはなかった。