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side Otoya



テストの結果が発表された。
もちろん筆記テストは載る訳がないことはわかってた。だから、実技結果の方に走っていくと、自分とのえるの名前が載っていた。

やっぱり、のえるの音楽はすごい。

この結果を見て一緒に喜びたかった。生徒達が集まっているエントランスを見まわして姿を探すと、どこか遠くを見ているのえるを見つけた。




のえるの姿が気になってエントランスを出ていく彼女を追いかけた。
入り組んだ校舎の裏に聞き慣れた2つの声が響いた。


「あ、ごめん…また私…トキヤに余計なこと言って…」


「貴女って人間は、本当に理解に苦しみますね。私にこんなに酷い目にあわされているのに、貴女はそれでも私に関わろうとする。」


「ごめん…」


のえるの悲しそうな顔…初めて見た。トキヤの悲痛に耐える顔も初めて見た。
2人は姉弟なのに、どこかよそよそしい距離感に違和感を感じた。



そもそも、酷い目にあわせているってどういう事だろう。



「謝るくらいならやめなさい。…ですが、ありがとうございます。参考にしますね。」


「トキヤ…あの大丈夫?」


「貴女の曲…とても素晴らしいと思いましたよ。では。」


そう言えば、トキヤの名前…なかった。
トキヤはいっつも俺の鼻歌にすら音程やらリズムやら訂正箇所を的確に教えてくれてた。歌を聞いても足元にも及ばない技術だと思った。




「ねぇ、大丈夫かって聞いてるでしょ!答えなさいよ。」


「しつこいですよ…まったく。」


「あ、コラ。今笑ったでしょ。」


「安心してください。今の貴女の馬鹿な言動のお陰で、気が抜けましたよ。今回は私の負けのようです。」




のえるがトキヤがサラリとかわした返答に頬を膨らませる勢いで怒りはじめた。

ねーちゃん強し…

人を近づけさせない雰囲気を纏った時のトキヤに食ってかかる勇気、俺にはないかも。
それに、トキヤのそのブラックな雰囲気をサッと取り除いて笑わせる力はすごい。俺がもしもやったら更に引いた目で見られるんだろうなぁ…



のえるはやっぱり凄いよ。



トキヤとのえるは別々にその場を後にした。
覗き見してしまった事を後悔しながら、自分も教室に戻る事にした。
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