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結果発表。
やはり筆記試験上位には自分の名前はなかった。
まぁ、音也に大きく言えた程勉強も得意ではなく、成績はいつも普通。
今回に至っては授業もボーとしていることもあったし、付け焼刃にしてはヤマが当たっていたほうだと思う。
実技の方を見ると、自分の名前が2位のところにあった。


まさかと思ってジッとそこを見つめると、確かに名前が表示されていた。
1位は春歌ちゃんと、那月君。トキヤの名前は…

上から順に名前を確認する。追っても追っても見つけられず、最後から数番目のところにトキヤの名前を見つけた。


遠くでエントランスを後にするトキヤの後ろ姿を見つけた私は、トキヤを追いかけた。














「トキヤ!」


「…」


「筆記テストの結果、すごいね。私なんて当たり前だけど載りもしないよ。」


私が呼ぶと、トキヤは何も言わずにこちらを向いた。
少し眉間に皺を寄せて、少し迷惑そうにしているのが見てわかる。だけど、どうしてもトキヤと話さなければならないような気がしたのだった。


「ですが実技は貴女と音也の方が上でした。おめでとうございます。」


「ありがとう…あの、トキヤ」


「今は、貴女に構っていられる気分ではありません」


「トキヤ…待ってよ。」


ピシャリと言い捨てられてしまったけれど、私は食い下がらなかった。
トキヤの腕を掴んで静止させた。するとトキヤは大きくため息をついたのだった。



「はぁ…何ですか」


「あの…トキヤは私が一昨日、楽しいのか聞いたらちょっと困った顔してたから。…だから、その…今度組むパートナーの子とはちゃんとお互いの意見を出し合って相談していくのがいいんじゃないかなぁって。HAYATO様じゃない一ノ瀬トキヤの歌、すっごく上手だし、綺麗だし、私好きだよ?」


「…」


トキヤの透き通った瞳が私を捕まえて逸らせない。
何の返事もないトキヤ。私はまたやらかしてしまったのだろうか…また自ら地雷を踏む様な行為をしてしまったのかもしれない。だけど、どうしても言いたかったから…


「あ、ごめん…また私…トキヤに余計なこと言って…」


「貴女って人間は、本当に理解に苦しみますね。私にこんなに酷い目にあわされているのに、貴女はそれでも私に関わろうとする。」


「ごめん…」


「謝るくらいならやめなさい。…ですが、ありがとうございます。参考にしますね。」


辞めなさいと言う反面でトキヤがほんの少し微笑んでお礼を口にすると、私はなんだかとっても嬉しくなった。



「トキヤ…あの大丈夫?」


「貴女の曲…とても素晴らしいと思いましたよ。では。」


「ねぇ、大丈夫かって聞いてるでしょ!答えなさいよ。」


トキヤの様子が心配で聞いているのに、無視してほかの話題に変えたトキヤに少しイラっとした。仁王立ちで鼻息も荒くしながらトキヤに食い入るように聞くと私の顔を見ながらクスクスと笑い出し、「しつこいですよ…貴女ときたら、まったく。」と言うトキヤ。
何だか馬鹿にされたというか…私の顔ってそんなに面白いですか…どうせアイドルコースの芸能人志望の女子たちになんて敵いっこないですよ…

ぷぅっと頬を膨らませていると、更に笑うトキヤ。


「あ、コラ。また笑った!」


「安心してください。今の貴女の馬鹿な言動のお陰で、気が抜けましたよ。今回は私の負けのようです。」






トキヤのこんな風に笑った顔、初めて見た気がした。

私の事を完全にお馬鹿扱いしているけれど、それでもまぁいいか…なんて思える程、トキヤが笑ってくれて良かったって感じたから。
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