02
寿さんのマネージャーになって直ぐのことだった。事務所のイベント企画で学園時代のメンバー、そしてQUARTET★NIGHTの4人が集まることとなった。
寿さんはこの企画が本日の仕事一発目で、現地集合することになっていた。寿さんより先に到着しておかなければと思っていたが予想以上に早めに着いてしまった。しかし、会議室を覗くとすでに春歌、友千香が座っておりキャッキャと話に華が咲いていた。近寄って声を掛けると友千香が「咲優久しぶり!元気してた?」と笑った。相変わらず整った目鼻立ちにケアを怠っていないであろう健康的で綺麗な肌だ。自分も見習わなくては、と彼女を見る度に決意を固めている。話の話題はどうやら恋話。女子トークではよくあるが、久しぶりに会った友人たちの近況は気になるものだった。


「友千香最近何かあったの?」

「今別に気になる人もいないかなー。仕事一番だもん。あ、でもタイプは大人な雰囲気だけど、可愛い所がある人。キュンてする。ところで春歌はいるんだよねー!?」

「えっと…」

「え?何々!?いるの???」

「咲優、情報おっそーい!ま、私も相手が誰かまでは知らないんだけどね。今日こそは聞きだそうじゃないの。」

「よっし!春歌!応援するよ!?」

「えっと…寿、嶺二先輩。最近はなかなかお仕事が一緒にらならくて会えてないんだけどね。」


寿さんの名前を聞いて苦しくなった。春歌の事を応援したいのに、今自分がちゃんと笑っているのかわからなかった。
春歌は寿さんの曲をいくつか作っているし、きっと接点も多いのだろう。寿さんが作曲家といる時やレコーディングの時には事務所の仕事をしている私にとっては知らない世界だ。


「早く言ってよ!今折角寿さんのマネージャーやってるんだから、言ってくれたら協力するのに。」

「本当?!ありがとう。咲優ちゃんはいないの?」


春歌が笑って私の手を握った。可愛らしい容姿に柔らかな雰囲気。相変わらず私に向けられる笑顔は私を安心させる。春歌の事を応援しよう、私の大切な友達が幸せになってくれたらいいと思った。


「…居ないよ。でも、好きなタイプは真面目で、大人で、物腰の柔らかい、優しく笑う人、かな。」

「誰かそんな人近くにいる?」

「んー…いたら紹介してよね。」

「まっかせといてよ。」


友千香が誰かいないかと、うーんと唸っているけれど、好きなタイプを言うところで寿さんを思い浮かべた私はやはり彼を好きなのだろう。


「やっほー後輩ちゃんたち!今日はよろしくマッチョッチョー!女子トーク!?恋話に華が咲いちゃってたかな?僕チンも入りたーい!」

「寿さんは女子じゃないでしょう。」

「嶺ちゃんが入るなら俺も入れてよ!」


突然後ろから寿さんの声がして輪に加わった。どこから聞いていたのだろうか。自分が紹介してと言っていた所も聞かれてしまったのかと思ったらまた胸が苦しくなった。
一ノ瀬君と音也が後から加わると、その後続々と面子が集まり始めた。

企画会議は事無く終わり、その後バラエティー番組の収録が2本、合間に雑誌の取材…終わったのはすでに夜の10時過ぎだった。「今日の反省会は?」と聞いてきた寿さんに遅いので今日は止めましょうと伝えると唇を尖らせて不貞腐れていた。けれどすぐにニコリと笑って、夜も遅いからと家の近くまで送ると車のキーを出した。

近くの路地に車を着けると「はい、到着。お疲れ様。」と言って寿さんが私の頭をポンポンと撫でた。


「本当はマネージャーの私が運転しなくちゃいけないのに、すみません。」

「僕ちん運転好きだし別に気にしなくていいんだよ。帰るのに遠回りでもないしね。」

「ありがとうございます。でも毎回申し訳なくて…」

「じゃあお礼してもらおっかなー。明日1日オフだし、僕とデートしない?」

「は?」


今何て言った?お礼を言った私に何気なくフォローを入れつつスマートにデートに誘う寿さんはやはり大人だ。あまりにもスマートすぎて間の抜けた反応をしてしまった。


「は?って…もうちょっとキャピッとか、キュンっとかないの?」

「リアクション寒いですよ…それに、私じゃなくても寿さんとデートしたがってる女の子なんていっぱいいるでしょう、アイドルなんですから。」


キャピとか、キュンとかリアクション付きでやってくれるのは場を和ませるためにはカジュアルだったけれど、突然デートと言われた此方としては理解できないままだ。


「僕は咲優ちゃんとデートしたいの。」

「あの…明日は事務所で仕事があるので。すみません。」

「そっか、仕事じゃ仕方ないね。」


ふと昼間の春歌の顔が浮かんで嘘を吐いた。けれど寿さんは優しく笑って仕方ない、頑張ってねと言ってまた私の髪を撫でた。それからも寿さんとの毎日の反省会も何かと理由をつけて避けたし、プライベートなメールの返信は断り続けた。

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