03
「御馳走様でした。」


蘭丸の食事マナー、箸遣いなどの所作は流石と言える程綺麗なものであった。作った食事は全てきれいにたいらげて、大きな手のひらを合わせてちゃんと頭を下げる。


「お粗末様でした。」

「いや、美味かったぜ。」


普段あまり人に料理を振る舞ったりしない名前は蘭丸が美味しそうにペロリと食べてニコリと笑う姿を見て、ホッと胸を撫で下ろした。


「良かった…あ、そういえば蘭丸先輩は今日何で私がいる場所、わかったんですか?」

「あーそりゃ嶺二が…」

「あぁ、嶺二先輩。私が部屋にこもってるって聞いたみたいで、アドバイスしに来てくれたんです。今、嶺二先輩とトキヤと音也のユニット曲を依頼されてて…」


ギクリと蘭丸がバツの悪そうに嶺二の名前を口にだすと、名前の顔がパッと華やいだ。それをみた蘭丸の表情は名前と反対に曇りだす。嶺二と二人きりで話をしていた所を想像しては、楽しそうに笑う名前の顔を思い浮かべると、自分以外の男に無防備すぎて腹立たしくて仕方がなかった。


「テメェは俺のなんだよ。いっつも他の男の名前だしたり、そいつらに触られても全然気にしねーし、本当に危機感ねぇよな。」

「…えっと。」

「あーわりぃ。今の忘れろ。…はぁ、何言ってんだ俺は、クソっ」


とうとう不満を口に出してしまったが、それを聞いた名前はあからさまに困った顔で蘭丸を見ていた。困らせるつもりはなかった。ただ、自分にはあまり見せない姿に嫉妬しただけのことだ。名前の表情を捕えると、自分の子供染みた言い分が男として、年上としてみっともなく感じて体裁が悪くなった。
蘭丸が名前から視線を逸らすと、名前が蘭丸の袖を掴んだ。


「私…は、蘭丸先輩の彼女です!蘭丸先輩以外の男の人に触られてるのはあんまり意識してなくて…その、疎くてごめんなさい!!でも、蘭丸先輩の時は緊張しちゃってダメなんです!!だから、上手く伝えたり、触りたいのにできなくて…」


普段の会話であまり早口に大きな声で喋る名前ではないのだが、小さなアパートに名前の声が響いていた。嫉妬していたことが馬鹿馬鹿しく思えたと同時に、名前への愛おしさが増していた。こんな姿を見れるのは自分だけなのだと思うと優越感さえ感じる。


「…ぷっ」

「笑わないでくださいよ!!こっちはものすごく真剣に言って…」


名前が喋り終える前に、蘭丸が名前が袖を掴んでいた小さな手を握りしめて引き寄せた。バランスを崩した名前の腰に腕を回すと、そのまま唇を塞ぎながら畳の上に押し倒した。


「じゃぁ、緊張しなくなるまで慣らさねーとな。」

「せ、せせせ先輩!?」


真っ赤になった顔を両手で覆って隠そうとする姿は何とも愛らしい。蘭丸の大胆な発言には尽く慣れないまま、名前は照れるばかりだ。蘭丸が耳元に唇を寄せ、呟いた。


「名前、呼べって。名前…」

「や、無理…わ…私、好きすぎて死んじゃいます!!」



まであと何秒?

Fin
 

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