シャイニング事務所、ブラザー制度卒業後も、先輩後輩は良く同じ仕事を任されたことが多い。トキヤ、音也が嶺二と一緒の事も同様だ。仕事を終えてスタジオを後にすると、見知った名前が合ったから楽屋にお邪魔して、現在に至る。


「それ、一つ322キロカロリーですよ。何個目ですか。」


差し入れにと大量にあったオールドファッションチョコレートに目を輝かせていると、音也が食べていいよって言うからお言葉に甘えてみた。朝から何も食べていなかった私はパクパクと食べ進め、ドーナツをたいらげていった。すると、先程まで読書をしていたトキヤが口を開いたのだった。


「え…マジ?早く言ってよ!」

「知らない方が驚きます。よくそれでアイドルやっていられますね、貴女は。」

「音也と違ってトキヤって本当に可愛くないよね。」

「そのカテゴリーに属しているつもりもありませんし、今後所属するつもりもありません。」


ドーナツってそんなにカロリーあるんだ。っていうか、人が気にしていることをズケズケと…言い争って勝てるとは思ってないけど、藍より勝算はあるし、何より先輩にこの物言いは腹立たしかった。
異様な空気を察して音也が「まぁまぁ二人とも。」と割って入ったけれど、私の口は止まらなかった。


「昔はもっと可愛かったのになぁ。宙ちゃ〜〜んってにこにこしてさ。」

「な!!いつの話をしているのですか。それに話を逸らさないで現実を見なさい。」


私は嶺二同様、子役としても活躍していたこともあって芸歴は長い方だ。だからHAYATOとも面識がある。HAYATOは昔から人懐っこくて可愛くて、弟みたいな存在だった。
昔の話をされてトキヤが照れているのは可愛いと思うけど、また言い返されて私は不貞腐れるばかりだった。


「トキヤの小姑。先輩のこともっと敬えー!」

「私は尊敬する方、目上の方にはちゃんと敬意を払いますよ。」


投げ遣りに言うと、トキヤが私の顎をグイッと思いっきり持ち上げた。バチリと視線が合ったかと思うと思いっきりアイドルスマイルで微笑むトキヤが目の前にいた。私より綺麗な顔してるトキヤの威力は凄い。


「は、ははは払ってないし!」

「目上と思えないほど宙さんは幼稚ということでしょうね。」


ニコリと笑顔のままのトキヤは勝ち誇ったように私を責めたてた。掴まれている顎を振り払ってトキヤとの距離を取ると、近くにいた音也に抱き付いた。


「音也ぁぁぁぁぁああああトキヤがいじめる!!!」

「宙ちゃん!?」


音也があたふたしているのを全く気にせずにギューっと抱き付くと、後ろから物凄い静かな怒声がして、ピリついたオーラに振り返ることができない。音也、ゴメン。


「音也、宙さんから離れてくださいね。彼氏の目の前でどういうつもりです?」

「トキヤの視線が怖いよぉぉぉ!!嶺ちゃん早く帰ってきてーーーー!」





一ノ瀬トキヤ…私の綺麗で、たまに可愛くて、常に憎たらしい彼氏様。



     



(たっだいまー!って、何この空気。)
(あ、嶺二!あんたトキヤにどんな教育してるの!ド阿呆!!)
(えええ宙ちゃん何でここに?っていうか急に酷っ!!)
(そーゆう所が幼稚なんですよ全く。)



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