獅子の記憶 12-x



そこは、ボンゴレ9代目が住まう屋敷である。
少女はカタカタとワゴンを押しながら、屋敷の中のとある一室に入っていく。
待ち構えていたのは、精悍な顔つきをしたボンゴレの金獅子だ。


「どうだった?」


金獅子こと沢田家光は、ワゴンを押しながら入出してきた幼い少女に訊ねた。
少女は硬い表情を崩さず、はて?と首を傾げる。

「……どう、とは?」

彼女はただ、家光に言われた通りに、キャバッローネファミリーのボス・ディーノとその側近ロマーリオにエスプレッソを手渡した。それだけである。それ以上のことも、それ以下のこともない。
彼女が答えに窮していると、沢田家光はふむ、と顎をさする。


「あのディーノって男はどうだった?」


ディーノ。
きらきらとした金髪の、優しそうなひと。
多分、ちょっとおっちょこちょい。けれど。



「…………太陽のようなひとでした」



彼と目が合った時、ほんのりと心が温かくなった。

まるで陽だまりにいるようだった。

少なくとも彼女はそう思った。









「そうかあ」

沢田家光はそれ以上多くを聞かず、ただよしよしと彼女の頭を撫でるのみだった。齢6歳の彼女は少しくすぐったそうな表情を浮かべ、沢田家光はその幼い表情に苦笑いを浮かべる。

彼女の言葉は、後に9代目に告げられ、それを聞いた9代目はとてもとても嬉しそうに笑ったという。



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