獅子の記憶 0
その星の名前は、フォーマルハウトという。
秋、南の地平線にぽつりと光る、秋の一つ星。
孤独に光るその星は、古来より人を導く星として伝えられてきた。
「孤独な一つ星だなんて、大層な名前つけやがって全く」
沢田家光はベッドですやすやと眠る少女を見て、苦々しい表情を見せる。
家光の態度から父と母の死をかぎ取ったらしい彼女は、夜になっても眠りにつくことはなかったが、気絶するような形で朝方に床についた。
彼女の母もまたそうだったように、彼女もまた、星の運命に逆らうことは出来ないのだろう。
いつか来るであろう、その日まで。
「おじさんが守ってやるさ」
星の輝きを奪うもの、全てから守る。
守り切れなかった先の分まで、絶対に。
眠る少女の頭を一撫でして、家光はその部屋を立ち去った。