ぼくは大学で、あの日――というのはもちろん、未だかつてないほどに卑猥かつ激しいセックスをした夜のことだ――以来、「色っぽくなった」と言われることが増えた。
「なにそれ」
と、笑って濁そうとしても友人たちは「いやいやまじで」「ふとした瞬間、すっげー妖しい表情してんだって」と力説されてしまう始末。まさか、自分が受け身側に回っていることがバレたわけではないだろうが、どきどきしてしまう。
友人たちには歳上の恋人がいることは話してあるが、さすがにおとこだとは伝えていない。大学生ともなればひとりで過ごすのも苦ではないし、バレたとしてもそこまで問題はないがわざわざ公言する必要もないだろう。
ぼくはそれよりももっと、バレたらやばい状態にあるのだ。
「秋穂、顔赤いぞ? だいじょうぶか?」
「……っ、うん、へいき……」
はあはあと荒い息を吐いてしまいそうになるのをなんとかこらえながら、右から入って左に抜けていく教授の声をなんとか聞こうとする。けど、むだな努力だった。どうしても、お尻に意識がいってしまう。
――そう。ぼくの中には、とあるものが入っているのだ。いわゆる、ローターってやつ。忠さんとばかみたいに真剣に選んだ、音が静かな遠隔操作ができるおとなのおもちゃは、本日、大学で大いに活用されていた。
今週の土曜日、午前中は補講があるから会えるのは午後からになると告げたところ、彼は残念そうにしたのち、すぐにいたずらをおもいついた子どものような顔で「それ」を提案してきた。
「秋穂くん、えっちな道具に興味ない? ……ローター入れて、講義受けてみよっか」
――と。
ぼくは誘惑に抗えず、忠さんの言う通り後孔にピンク色の物体を押し込んでここまでやってきたのだが、電車に乗っているあいだも、歩いているあいだも、淫具はずっと振動しっ放しだった。周りに音で悟られないよう弱にしてくれているけれど、それでもローターが前立腺をかすめれば、指先まで痺れるような快感に襲われる。
これを操っている張本人は、実は大学の敷地内にいる。リモコンの電波が届く範囲が限られているためだ。
この大学は図書館を一般のひとが利用できるように解放されているので、そこでぼくの帰りを待つと言っていた。本を読むふりをして、いたずらに振動を強めたり弱めたりとめたりしているのだ。
日常に潜む非日常的行為に興奮は増すばかりで、はやくペニスを挿れられたい、と淫乱じみたことをおもう。ぐずぐずになったお尻の穴を「もうマンコじゃねーか」と罵って、乱暴に暴いてほしい。
どうしよう。ぼく、帰るまで我慢できるのかな。今でさえ、ほしくてたまらないのに……
――なんて不安がっていたくせに、結局三時間、ぼくはたえきった。たぶん、バイブの振動が弱かったからどうにかなったのだろう。でもそのかわり、ものたりなさがひどかった。
よたよたと歩くぼくを見かねて友人が送っていこうか、と申し出てくれたのだが、「ごめん、ひとと待ち合わせしてるんだ……」と断って図書館へと向かう。すると、向こう側から忠さんがやってくるのが見えた。
「ぁっ……
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」
それだけで、下半身がきゅんと疼く。
「秋穂くん」
爽やかな笑みを浮かべてぼくに駆け寄った彼は、そのまま耳元で「……今、すっごくえっちな顔してるよ? だいじょうぶ?」と囁き、笑った。
「……っ
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ぅ
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だめ、はやく……っ
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おまんこでいっぱい、きもちよくなりたい……
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」
蚊の鳴くような声だったけど、忠さんにはちゃんと届いたようで、腕を掴まれそのまま捕まえたタクシーにふたりで乗り込んだ。
「――駅の前まで」
忠さんがそう言えば、車は緩やかに発進する。大きな通りの、周りの音が騒がしいところで振動をやたらと強くされ、信号でとまるとスイッチを切られる。解放できない欲望がどんどんたまっていく。つらくてくるしくて、でもぼくにははやく着いて、と願うことくらいしかできなかった。
タクシーがようやく駅に到着し、料金を払った忠さんは「秋穂くん、だいじょうぶ? 歩ける?」と心配そうな声音で訊ねてくる。
「あ……、はい、」
ふらり、外に出て立ちあがろうとしたが、足がもつれた。
「わっ」
「おっと」
俊敏な動きで忠さんがぼくの体を支えてくれたので大事には至らなかったが、ちょっとひとりで歩くのは難しそうだとおもった。
「すみません、やっぱり、ちょっと……」
「うん。肩貸すね」
マンションが駅からすぐそこにあってよかったと、心底安堵した。支えられながらなんとか前に進み、エントランスを抜けたところで、ここまできたらもういいかとはー、はー、熱い息を吐き出す。
「……秋穂、まだ外だぞ」
「んっ……
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」
突如、話しかたが変わったことにどきりとし、あまい声をあげてしまった。
「あともうすこしがんばれよ」
「は……い……」
なんとか忠さんの部屋までたどりつき、扉をひらいた瞬間、ぼくは玄関先でへたりこんだ。
「あー……っ
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は、あ
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ただし、さん……っ
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」
「よく我慢したな、秋穂。偉いぞ。……いい子にはご褒美をやらないとな……。なにがほしい?」
しゃがんで、やさしく問いながらもその人の目は野獣のようにぎらついていて、おへその下がきゅん
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とする。ついでに、だばっと涎が分泌された。
「ぁ……っ
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ただしさ、ただしさんの……、おちんちん
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おちんちん、ほし……っ
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」
「それ、ベッドでケツ穴ひろげて見せて、もっかい言って」
「……ッ
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」
いじわる、と潤んだ瞳で睨んで、なんとか移動してベッドの上で下を脱ぎ、尻だけ高くあげ、忠さんが見やすいようにしてから尻たぶを左右に割った。
「おねがい……、ただしさん……っ
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ぼくのここに、はやく、おちんちんいれてぇ……
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」
「……ローター入れたまま?」
「どっちでも、い、からっ
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」
玩具のおかげでそこは準備万端だった。ローションをすこしたせば、すぐに挿入できるだろう。
「秋穂……」
熱っぽい吐息を零して、忠さんがベルトを外す。かちゃかちゃという音が、ひどく卑猥なものに聞こえてたまらないきもちになった。
ああ、やっとおちんちん、挿れてもらえる……
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そう、うっとりしたのは束の間。肉棒が入ってくる前に、ローターの振動が一気にひきあげられた。