今日は誰もが甘く、ふわふわした気持ちになれる年に一度の特別な日。
甘いプレゼントと共に気持ちを伝え叶えば、それは永久に続く愛だろうといった言伝えがある。その為、何処へ行っても甘い香りが漂い、辺り一体を支配していた。

また、彼女もそんな言伝えを信じる一人であった…





「ん〜…ダメだ!何回やっても上手くいかないよ…」

本を片手に、キッチンを忙しく歩き回るが焦りで上手くいかない。
チラリと時計に目を向ければ午後3時前。

「ど、どうしよう〜。早くしないとリンクが来ちゃうのに、これじゃ間に合わない…!!」

実は彼女、ずっと前…まだモンスターが多くハイラルを支配していた頃、モンスターに襲われていた所をリンクという青年に助けられた。以来、その事件をきっかけに何かと会う機会が多くなり、いつしか彼を好きになっていたのだ。


そして今日。なんと、丁度リンクが遊びに来る日。
よって言伝えを信じて気持ちを伝えるべく、甘いプレゼント…お菓子を作っていたのだが、失敗続きで未だに完成していないのである。
昔から不器用ではあったが、ここまで何も出来ないとなると己を呪いたくなった。

「ぬあぁ〜時間がない!どうしよ―」


トントンッ

そんな最中(さなか)、軽快に響くノック音。
勿論、それが誰なのかは聞かずとも分かっていた。分かってはいるがまだ…

「***?入っていい?」
「ご、ごめん!ちょっと待ってて!」

暖かくなり始めたとはいえ待たせるのは悪い。結局、何も出来なかったと溜息を吐きながら急いで散らかったキッチンを片付け、身支度を整える。

「入っていいよ!待たせちゃってごめんね…取り敢えずお茶淹れてくるから適当に座ってて」
「俺の方こそ忙しい中に来ちゃったみたいでごめんね…」
「気にしないで、私が忙しくなるような事してただけだから」
「…?」

キョトンと見つめてくる碧く透き通った瞳。
顔が赤くなりそうなのを必死に押さえ紅茶を差し出す。

「ありがとう」

微笑む彼はまさに天使、なんだけど…

「ねぇ…リンク、そういえばその袋どうしたの?」
「ん…これ?」

あぁ、と取り出したいつもより大きめの袋。中には色とりどりにラッピングされた箱や袋が沢山入っていた。
本当はそれが何なのか予想は出来ていたけど、やっぱり悔しい。こんな思いすると分かっていながら聞いてしまう私も馬鹿だ。

「ここに来る途中途中で貰ってさ…。俺、誕生日でもないのに何でだろう?」
「……知らない」
「***?」

勿論、リンクが今日がどんな日なのか知っているとは思っていない。
それに、本人は気付いてないかもしれないけど城下じゃ女性達からの人気は高い。だからこそ誰にも負けたくなくて頑張っていたのに結局…


「…***?だ、大丈夫?」
「…え?あ、うん。大丈夫。ちょっとキッチン行ってくるね」

気まずくなってキッチンへ逃げ込んで再び溜息。勝手な自己嫌悪でリンクに当たってしまうなんて最低だ…
リビングを覗けば、リンクが困惑しているのが見て取れた。

「どうしよう…」

ふと窓の外を見れば町がオレンジ色に色づき初めていた。
このまま今日が終わってしまうのは絶対に嫌だ。棚には使わず仕舞いになってしまった箱。


「………うん…!」







「俺…なんか悪いことしちゃったかも……」

いまだに困惑気味なリンク。

「***…さっきはごめん。何か悪いことし―」
「リンクは何も悪くない。ごめんね……それと…」

リンクの言葉を遮って綺麗にラッピングした箱を渡す。

「それ、私からのプレゼント…!」
「…え?」
「い、いいから開けてみて!」
「わ、分かった。」

スルスルとリボンをほどき、器用に包み紙を外して箱を開けた。

「?…なんにも入ってないけ…あ、こ、これって…」
「そ、そのままの意味に、き、決まってるでしょ!!」


あぁ〜今更恥ずかしくなってきた…!!
あれが精一杯の甘いプレゼントよ!けど、やっぱり止めれば良かった…でもこれで後悔は無、いぃ??!!!

恥ずかしくて目を瞑っていたにも関わらず何が起きたのか十分理解できた。けれど、私の心臓は大丈夫かと思う程に速くなって顔も熱くなるのがよく分かった。
恐る恐る目を開けると、目の前でニコッと悪戯に笑うリンク。

「これが俺の答え…大好きだよ、***?」
「ば、バカァ〜!!」

何故、彼はこう大胆な行動を取れるのだろう…そこが時に憎い。
けど…涙が出そうな程に嬉しいのは本当。







早いお返しは もっと甘い口付けを
(まさかこんな嬉しいプレゼントが入ってるなんて思わなかったよ)
(も、もう言わないで…!)





#バレンタイン企画にて


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