ある日
少女は問うた
本当に何でも叶うの?
当然の如く
仮面は答えた
そうダよ
ボクは***の願いヲ何でモ叶えラレる
だって、ボクはムジュラの仮面だモン
カタカタ、カタカタ
乾いた音を震わせるそれは、ハートのような形に紫、黄色と不思議な配色を施したお面
その傍らで少女が一人
今夜の献立について模索していた
「なァなぁ…ヒマだよ***」
「でもね、私は忙しいのムジュラくん」
その言葉に、つまんないと騒ぎ出すムジュラと呼ばれたそのお面はくるくると宙を舞ったかと思えば、コトンと少女の頭に着地
「だったら、ボクが***の忙しイの片付けてアゲルから願ッテ」
しかし、少女は願わない
「なんデ、ナんでダヨ、願えばシアワセだヨ?」
「ムジュラくん、それは違うよ…私はもう幸せだから願わないだけ」
少女は今まで一度だってムジュラに願った事が無い
少女に欲が無いからではない
ムジュラが傍に居るということ自体が少女にとって幸せの対象であるため故にそれ以上を望まないのだ
「ムジュラくんは沢山の人達を幸せにしてきたんだよね?」
「そうダヨ、どンな願イモ沢山叶えてきタ、みんなシアワセになった」
そうだ
ボクは沢山の奴らの願いを叶えてきた
だって、ボクはそんな奴らの欲が大好物だから食って喰って喰らい尽くしてやったんだ
この少女だってそのつもりでいた筈なのに…
「じゃあ、ムジュラくんはどうして自分の願いを叶えないの?」
「キ…キヒッ、ボクの…願い?」
「そう、ムジュラくんの願い」
「ボクが、願ウ…?何を言って……だってボクは、」
ム ジ ュ ラ の 仮 面
ボクが願うなんて、ボクが欲を持つなんて
そんなはずはない、あってはいけない
「可笑しいよ…だってムジュラくんは私に願って欲しいと願った、それがムジュラくんの願いだよ」
笑いか悲鳴か…
あるいは両方か…突然ケタケタと奇声を上げて少女の周りを飛び回る
あぁ、何が何だか分からない
ムジュラの思考はぐちゃぐちゃに掻き乱されていた
そうして暫く飛び回った後、少女の前にゆっくりと降り立つ
「なら、ボクはどウスればイイの?」
教えてよ***
そんなムジュラに両手を伸ばして少女は微笑んだ
「今度は、私がムジュラくんの願いを叶えてあげる」
ある日
女は問うた
幸せですか?
当然の如く
仮面は答える
そうダよ
ボクは***の願いヲ何でモ叶えラレる
だって、ボクはムジュラの仮面だモン
(ムジュラくんが幸せになりますように)
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