ひとつ、ふたつ、みっつ…
ポイポイと視界上に増えるちり紙を恨めしく思うも、止まることなく滝のような鼻水と格闘していた。
おまけに喉は痛いしで、新年早々最悪なスタートである。
「薬あったかしら…」
例年に比べ寒かったこともあり、風邪を引いたのだろう。
それにしても、鏡を見ると悲しくなる。かみすぎて鼻は赤いし、髪はボサボサで酷い有り様。こんな姿、絶対にあの人にだけは見られたくない。見られたが最後、それをネタに永遠とバカにされるに違いない。いや、間違いなくそうだ!
そう、例えばそ「それでもキミは女かね?」
…って、あれ?なんでこんなフルボイス付で台詞が。
「分かっていないようなので、もう一度言おう。」
「え、あ、あの…」
「キミはそれでも女かね?」
「ぎ、ギラヒム様ぁああぁあああ?!」
うるさいな全くとでも言いたそうな顔しているが、なんでここにいるのかこっちが聞きたい。窓もドアも鍵かけてあったのに…って、あ…
「テレポート出来たんですよね」
「今頃かい?」
「…って、そうじゃない!なんで、勝手に入ってきてるんですか!いくらギラヒム様といえレディーの部屋に勝手に入るなんて失礼極まりない!!」
「紙くずだらけで汚くて、当の本人も鼻水垂らして髪もボサボサで服もよれよれな状態でレディーの部屋に勝手に入るなと、***君?」
「すいません私が悪かったです」
「よろしい」
悔しいがその通りである。悔しさと恥ずかしさで今すぐ逃げ出したいが、私の鼻はそれどころでないので再びティシュを取る。
今回の風邪は、本当に厄介である。
「それにしても、何か御用ですか?」
「いや、珍しくキミが朝から姿を見せないのでね」
「出来れば1日会いたくはなかったです」
なんて最悪なんだ。
別に、ギラヒム様と毎日会ってるわけじゃないし、ギラヒム様のほうが先に出掛けて居ないことのほうが多い。それなのに、毎朝顔会わせてるみたいな言い方…
「はぁ…、全くキミの鈍さには呆れてしまうよ」
「どういう意味ですか」
「まだ気付かないならそれでもいいよ。取り敢えず、さっさと風邪を治すことだね」
「えっ、ちょっ…て行っちゃった」
結局何をしに来たのだろうか。
溜め息をついて机に向かうと赤い液体の入ったビンがひとつ、メッセージガードと共に置かれていた。
―飲まないと全治百年―
(見舞いに来たならそう言えばいいのに…でも、ありがとう)
(どうしたらあそこまで鈍感になるのだろうね。私の身にもなって欲しいよ)
Fin..
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