ギラヒム様が怪我をした。


フィローネから戻ったボコブリン達からの報告に、一瞬目眩がした。魔族長であられるあの御方が怪我をするなんて、余程の事がない限りは絶対に有り得ない。

確かに、普段から可笑しな行動をとったり自分本位だったりと部下を困らせるような事はあったけど、剣術に関してはとても強い。


それなのに、それなのに…!頭の中は良くないことばかり浮かんでは消えての繰り返しでおかしくなりそうだった。
そんな事を考えてるうちに、気付けば目の前にはギラヒム様の寝室の扉があって、壊れるとか気にせずに勢い良く開けて飛び込んだ。





「ギラヒム様!」
「おや、***君。そんな今にも死にそうな顔してどうしたんだい?」
「どうしたも何も、怪我をされたと聞いて…!」


すると、あぁ…なんて思い出したかのような反応。


「怪我なんてかすり傷みたいなものだよ。」
「な、なんだ…てっきり大怪我してしまわれたのかと…。」
「魔族長であるワタシが、そんなヘマするとでも?まぁ、今回の事は遊びすぎてしまったがね…」


確かにかすり傷が少しあるだけで、目立った外傷はない。
しかし、私としたことが恥ずかしい事に安心した途端、糸が切れたかのよえにへたれ込んでしまった。


「ふふっ、そんなになる程ワタシのことを心配してくれたとは嬉しい話だ。」
「す、すみません!こんなみっともない姿をお見せしてしまい…!」
「いや、そんな謝ることはない。」


そういって、カツカツと目の前まで来たかと思えば、突然抱き上げられて何が何だか訳の分からない状態に。

いや、いわゆるこれが女性達が憧れるというお姫様抱っこだろうか。
いやいや、それ以前に何でこうなってしまったのか…って、それ以前に顔近いし逞しい胸が腕がって私は何を考えてるんだ…!!このお方は魔族長様であるのに、ただの部下である私がこんな…こんな……!!!


「顔を真っ赤にして、なかなか面白い反応だ。」
「あ、ああ遊んでいる場合では…!!」
「ふぅん…それはなかなかに寂しい言葉だね。」


なんて、少しムッとしたかと思えばベッドの上に落とされて、上から押さえつけられてしまう。
ど、どうすれば…心臓は爆発しそうな程に高鳴って仕方がない。けど…


「ワタシは…いや、俺は***が心配してくてくれた事が何よりも嬉しかったよ。それに遊びでこんな事するとでも?」
「ギラヒム、様…」
「いや、すまない。先程の事は忘れておくれ。ワタシはまた巫女を追わなくてはならないからね。」


そう言って離れたかと思えば、見たこともないような寂しい顔をされるから、思わず出て行こうとするギラヒム様のマントを掴んでしまった。


「***君…?」
「わ、私はギラヒム様が怪我をしたと聞いてとても心臓が潰れるかと思いました。でも、それは部下だからとかそういうことだけじゃなくて……その…」


言いたい。言いたいけど、言ってしまったら何か壊れてしまうのではと怖くてなかなか言葉に出来ない。
だけど、ギラヒム様は私を抱き締めて、びっくりするほど柔らかい笑みで言うんだ。


「好きだよ、***。」
「っ…!!わ、私もギラヒム様の事が…す、好き…です…!」
「それは、最高に嬉しい言葉だね。」






負ったのは全治不詳の恋
(人はそれを愛と呼ぶ)



1/1
prev next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -