―ザァァァァ…―
窓の外は今日も雨。
分厚い雲に覆われた空を見ていると、闇に覆われていたあの頃を思い出す。
だからって雨が嫌いなわけじゃない…寧ろ好きな方。
だって、雨音は聴いてると落ち着くから。それに、彼を思い出すから…
話したい事や謝りたい事が沢山あるのに、今はもう会えない大好きな彼。
「…ダーク……逢いたいよ…!」
*こんな空を見上げても、なんにもないって分かってる
ダークと初めて逢った時も、こんな雨の日だったよね…
異常に水嵩が減ったハイラル湖。
その離島で、ずぶ濡れになりながら一人立つ彼に声を掛けた。
「風邪、引きますよ?」
「……」
ちらりと反応は見せるだけでそれ以上は無い、そんな素っ気ない出逢い。それなのに何故か私は、彼を見かけては声を掛けたりと、今考えればもの凄く迷惑だったのではと思えるような事をしていた…
しかし不思議なもので、気付いた時には自然と言葉を交わすようになっていたのだ。
そんなある日のこと、
「***は俺が怖く…ないのか?人間じゃない事ぐらい、とっくに気付いてんだろ?」
「んー…じゃあ、なんでダークは私と一緒にいてくれるの?」
「それは…」
「ふふっ、大体にして、人間以外ここにはいないわよ?」
「っ…ハッ、やっぱり***には適わねぇな」
ふわり笑ったその笑顔も、寄り添った彼から伝わる温もりも、聞こえる心音も、恥ずかしい程に愛しいの。
だから、いつか訪れるであろう別れなんて考えたくなかった。
しかし、神は…世界はそれを許さない。
初めて逢ったあの日と同じ、雨が降る日。涙か雨か分からない程、ボロボロに泣いた。
それでも、行かないでなんて言えなかった。
それは、彼の存在理由を否定する事になるのではないかと怖かったから…
「………ごめん」
「っ……うぅっ…」
だったらせめて、ちゃんと“さよなら”って見送ってあげなきゃいけないのに言葉が出ない。
「***…」
「……―っ」
触れる唇。
優しくて甘い…なのに切なくてしょっぱいキスの味。
「愛してる―……」
神殿の奥へ消えていく彼。
私はただ泣くしか出来なかった。
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