「みてみて!!」
そう言って、嬉しそうに帰ってきた彼女はなんとも言えぬ哀れな姿で…
ずぶ濡れの泥だらけ。オマケにあちらこちらが擦り切れていた。
まさか魔物に襲われたのかではと焦るオレにはお構いなしに、彼女…***はズイっと顔の近くまで何かを包んだタオルを近付けた。
「おい…なんだこ―」
「にゃあ〜!」
「??!!!」
「へへっ…拾っちゃった!」
暖炉の前で気持ちよさそうに眠る小さな子猫。
その隣で、布団を被って丸まっている***。
どっちもネコに見えて仕方ないのはオレだけだろうか?
取り敢えず、ボロボロだったのは襲われたのではなく、川で溺れかけていた子猫を助けるためだというので一安心だが、今度は風邪を引かないか心配だ。
…って、オレはどんだけ心配性なんだよ…
「で、そいつはどうすんだ?」
作ってきたホットココアを渡すと、嬉しそうに笑う***があまりにも無邪気で無防備だから襲ってやろうか…なんて考えてしまう己を理性で抑えつける。
「どうって?やっぱり飼うでしょ?」
「は…、誰が世話すんだ?オレは一日中家に居れるワケじゃないの知ってんだろ?」
「知ってるよ。ダークじゃなくて私が世話すればいいじゃん。ネコの世話ぐらい出来るもんね!」
「ムリだ」
「うぅ……お願い…ダーク…?」
「ぐっ………」
流石に涙を溜めてお願いなんてされたら反論出来ない。
あぁ〜…これが惚れた弱みってヤツか?
「わーい、ありがと!じゃあ、このコの名前どうしよっか…ダークは何が良いと思う?」
「…ったく、んなもん適当でいいじゃねぇかよ」
「良くない!名前は大事なモノだからね…?」
そう言った***の顔はいつになく真剣で、***に名前を貰った時の事を思い出す。
―名前が無いの?―
―名前が無くていいなんて、あまりにも悲しすぎるよ―
―じゃあ私が付けてあげる―
―ダーク―
―暗闇の中でも見失わない銀色の髪、涙も優しく包んで隠してくれる闇夜の色…―
この言葉で、一体どれだけ救われただろうか
だからオレはお前を――…
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