「ごめんなさい」
注意して聞かなければ消え入りそうな、そんな小さな声で俺に言った。
顔は恐怖に歪み、ガタガタと体を震わせて。
けれど、そんな姿も俺には愛しくてたまらない。
「***…」
名前を呼べばいつも笑って返事をしていたが、それは昔の話。
今はビクリと肩を震わせ涙を浮かべる。
「なぁ…もう我慢出来ねぇんだ」
頬に手を添えれば、更に瞳が恐怖の色に染まっていく。
しかし、特に気にすることなくそのままお前の細い首筋に手をかける…
「***の全てが欲しい…」
もう待てない。
いつになれば手に入るか分からない、そんな焦れったい事はいい加減飽き飽きだ。
どうせ、いつまで待っても手に入らなかったんだ。
お前が他の奴と、あいつと楽しそうに笑ってる姿なんて…!
「ぁ……い…ぃや…」
だから、俺にくれよ?
その声も身体も肉も血も魂も全部全部俺にくれよ。
少しずつ締め上げれば、涙を流し苦しそうに助けを求めてくる。
だから、手を離してやれば苦しそうに咳き込んで、また俺にごめんなさい、許してと繰り返す。
そうだ。
そうやって俺だけを見ればいい。
誰にも***をやらない、その瞳に俺だけを映して俺だけの側にいればいい。
小さく震えた体を腕の中に抱き寄せて、渇ききった華に深く深く唇を落とす。
「おやすみ…***」
二度と何処へも行かせない。
たとえそれが、どんなに狂ったモノだったとしても。
堕ちた先は狂愛という名の籠の中
(永遠に俺だけの華であれ)
(最期に散るときも俺の中で)
end...
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