高校の時に付き合い始め、そのまま卒業してからもう約半年は続いている関係。
俺は大学に進学、神崎は家業見習い……という別々の道を選んだこともあり、会う機会がめっきり減ったのにこのまま終わったらどうしようと危機感を感じていた末に切り出してみた同棲話だった。
「俺一人暮らしだけど自炊しねえし、でもそれだと体に悪いから、お前飯作りにこい。」一緒に住もう、なんて柄じゃないというか何だか神崎相手に言うのは照れ臭くて、まずは適当にそれらしい理由つけて神崎が来てくれるようになったらいいと思ってそう言った。まあちょうど久しぶりに神崎とまさしく俺の一人暮らししてるマンションの一室で所謂お部屋デートの真っ最中、しかも昼飯を神崎が作ってくれていたから思いついたというのもあるのだが。
そしたら「なんで俺がそんなお前の召使いみてえなことしなくちゃいけないんだ」と返された。いや俺はどっちかというと通い妻のイメージで言ったんだけど、まあ確かに捉え方によっては召使いみたいだなとエプロン着けて飯作ってる神崎の姿にじゃあ今はそうじゃないのかと頭の中でツッコみを入れつつ、ぼんやりと(何故か)メイド服着た神崎を想像した。
可愛いような可愛くないような奇妙な感情にとらわれていたところ、出来上がった炒飯を持って俺の隣に座って「ん、」と差し出してきて、食欲をそそるいい香りと美味しそうな見栄えにやっぱりいっそ週一でもいいから作りに来てくれないかとどうしたら来てくれるようになるか考えていたら神崎がぽつりと「……合鍵、ないとお前いない時部屋入れないんだけど」と耳を赤くして呟くもんだから口に含んだ炒飯が変なとこに入って盛大にむせてしまった。
何してんだアホってそんなこと言いつつも、げほげほ咳き込む俺の背中を撫でて水なんか用意してくれちゃって、そんなこいつがかわいくてしょうがない。苦しいのに嬉しくて胸が熱くなる。


咳がだいぶ落ち着いてきたところで手渡されたグラスから水を一口、二口喉に通して深呼吸。
そうしている間も神崎が背中を擦る動きは止まず、さらには空いている手で俺が手に持つグラスをするりと取って机に置いた。その手がグラスから離れて正座した足の腿の上できゅっと拳を作る。心配そうに覗き込んでくる神崎はどうみても、うん。

「やっぱ、召使いっつーよりも奥さんだろ、お前」

「……は、」

「なあ、ここで一緒に暮らさねえ??」

先程は言えなかった言葉がびっくりするほどすんなりと口から出てきた。
何故だ。あれだ、きっと神崎が珍しく献身的な態度だったからだ。そうに違いない。きょとんとした顔の神崎にはっとしてだんだん照れ臭くなってきて「あー、いや、そのだな……」と自分で気持ち悪いと思うくらいもごもご口籠もって目線をあっちこっちに彷徨わせていると、フッと神崎が笑った気がしてそっちに目線を戻した。
やっぱり笑っていた。
馬鹿にしてるのかと思いきやそうじゃなく、神崎には珍しい優しい笑顔だった。
神崎が口を開く。

「回りくどいこと言ってねえで最初からそう言え、ばぁーか」

何だ、気付いてたのか。
いつもはムカつくくらい鈍感なくせに、本当、今日は珍しいことばかりだ。



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姫川の計画:ご飯作りにきてくれる→頻繁にくるようになる→泊まる回数が多くなる→いっそここに住めば?→同棲スタート

神崎くんが意外とお料理出来たらかわいい。和食は完璧だとなおよろしい。
下手でもそれはそれで萌えるんですが今回は料理上手な神崎くんで。




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