「寒いねー」

白い息を吐きながら夏目が言った。
夏が過ぎ去ってやって来た秋は秋と思えないほどに寒く、頬を掠める冷たい風にまだ冬にすらなっていないというのにマフラーが欲しくなる。今日はそんな夜だった。


「あ、」

ふいに夏目が声を漏らし俺を覗き込んできた。

「ねえ、手、繋ごうよ」

「はあ?バカかお前、わ、ちょっ、やめろ」

いくら夜だからって見られたらたまったものじゃないと制止したのも聞かず、夏目はさっと俺の手を握ると自身の学ランのポケットに一緒に突っ込む。

「いーじゃん、あったかいでしょー?」

実際にそうだから何も言い返せなかった。
やめろ、と自分の口はそう紡いだはずなのに、握られてポケットに突っ込まれて、その温かさに安堵していた。夏目の手を振りほどけない。
ああ、ほだされてる。
けれどこんなところ誰かに見られたらと思う羞恥心は相変わらずで、握られた手が急激に熱を孕んでじっとりと汗が滲む。

「神崎くん、」

手、熱いよ?

いつもの含み笑いでそう言う夏目。わかってるから言わないで欲しい。
俺が眉間に皺を寄せ睨み付けると、くすくす笑いながらごめんを2回繰り返して謝る。
そしていつもこう。

「だって神崎くんが可愛いから、つい」

バカじゃねーの。
俺みたいなのに可愛いとかおかしい。
だいたい可愛いなんて言われて喜ぶ男がどこにいる。
そう思うのに。

言われて体温が上がる俺も大概バカだ。




(体温)




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -