勇気と想い


「…………それを聞いて俺をどうするつもりなんスか?」

と後ろに後ずさりながらも防御体制をとっている。バッツは溜め息をついてティーダの近くに寄ってしゃがんだ。

「別に取って食おうとも思ってないし、殺そうとかも思ってないぜ?」
「え?」

ティーダは驚いた顔をしているとバッツはぷっと笑い出した。彼が笑い出す理由は理解してないが馬鹿にされている事だけには気付いた。

「馬鹿にすんなよな!?俺だって!!」
「わるい、わるい。別に馬鹿にしに来た訳じゃないぜ?」
「じゃあ、何用だよ!?俺を殺しに来た訳でもない、馬鹿にしに来た訳でもないなら一体、何しにだよ!?」

感情任せで言うとバッツは目を丸くして驚いた顔をしていた。ティーダは彼の表情に驚いたがバッツは嬉しそうに

「神殺しって聞く割にはきちんとした人の感情があるんだな!うん。やっぱり放って置けないな。」
「え?」
「夢の中で外に出たいって涙声が聞こえたんだ。その声にそっくりだと思ってたけどやっぱり、ティーダだったんだな」

ティーダはそんな事を他人に話す力など持ち合わせてないと言おうとするが

「だから、お前と外に出たい。おれは。」

だから共に外に行こうと手を差し伸べて、迷いのない目と言葉にティーダは目を丸くした。
夢にまで見た誰かが自分を手を差し伸べて、引っ張り出してくれる人を。王族、神殺し、神様とか関係なく普通に語りかけてくれる目の前の青年。
ティーダの頬から涙がこぼれ落ちた。
その時にふと父親の顔と声を思い出した。

『ジェクトさんの坊ちゃんは泣き虫か?ほら、泣くぞ?ほら、泣くぞ?』
「な、泣いてなんかねーかんな。クソ親父……」
「ティーダ……?」

バッツは驚いた顔をしたがティーダは乱暴に涙を拭ってバッツの手を握った

「俺……誰に何を言われようと外に出たいっス!俺は……外に出たい!!」

ティーダはバッツの手を取るとバッツはにっこり笑って

「分かった。俺はずっとお前の味方だ。
今のお前は神殺しでも神様も関係ない、ティーダと言う名の一人の人間だ。そんな目をしてるぜ。」

ティーダはバッツと共に長く居た地下室から陽の光のある大地へ再び足を踏み出す。

運命の歯車は未だに止まらず加速する。
バッツとティーダの運命はここから大きく変動させるとも二人は未だ知るよしもない。


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