十時からバイトのため九時に起きた。ぼうっとしている暇もなく顔と歯を洗ってから、さっさと着替えてバイト先のファミレスに向かった。くあ、と欠伸をしながらとぼとぼと歩き出す。先週の水曜にチャリが盗まれてから朝早く起きなくてはいけなくなってしんどいのだが、警察に届けを出すのも面倒で出していない。出したら探してもらえるのだろうか。っていうか、見つかるのだろうか。変なところで見かけたら連絡が貰えるのだろうか。つーか買った方がはやくないか? そんなことを考えている間に二十分。地味に遠い最寄り駅付近のバイト先に着いて、裏口から入る。


「おはよーございまーす」

「あ、イードくんおはよう」


 早番のパートのおばちゃんと挨拶を交わしてからロッカールームに向かう。まだ三十分ほどあるので喫煙所で煙草を吸いながら携帯をいじる。夜中のうちに友達からゲームを貸してくれというラインが来ていたので了解の意を返しておく。起きていたらしく、しばらく『バイト先なう』『昨日言ってたなそういや』『しかも二時まで』『普通じゃねーか』『夜中のな』『ブラックすぎんだろそれ。いい加減そこやめろ。そのうち過労で死ぬぞ』『心配してくれるとか優しすぎてわろた』『笑ってんのかよてめえ』『だってお前の顔でそれとか』『ぶっ殺すぞ』『やめて!冗談に聞こえない!』などというくだらない会話が十分前まで続いた。


「イードくーん」

「はーい?」

「そういえばオーナーから置き手紙あるわよ」


 いつの間にか喫煙所にいたおばちゃんから差し出された手紙を受け取って開いてみれば、置き手紙というかシフト表だった。予想通りにおれの名前と夜中の二時までシフトが入っている。オーナーマジ鬼畜。略してOMKだわー。横に休憩の時間が書いてあった。三時から五時と十一時から十二時。微妙に鬼畜。でも時間はしっかり取ってある。げっそりしながらも着替えに行ってパンパン、と顔を叩く。さー、今から働くぞ。頑張れおれ、頑張るんだおれ!


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -