御褒美のようなものの続編


 センゴクさん、ガープさん、おつるさんの三人連れられて向かったのは、おつるさんと何度か来たことのあるお店だった。こうして考えてみると、おれも結構おつるさんとご飯一緒に行ってるんだな。うち一回はドフラミンゴとクロコダイルに囲まれるというおっそろしい時間だったけど。……ていうかあのときさっさと先に帰ったけどさ、おつるさんのこと考えたら先に帰っちゃダメだったんじゃないの?
 女の人を残して帰ってしまったという後悔に苛まれながら、席に案内される。周りの、『え? あの人だけ海兵さんじゃないよね?』『馬鹿ね、あれ、七武海の鷹の目よ!』という目線がつらい。店の人ならプロだろ、そんなふうに視線に感情乗せるのやめてくださいよほんと……!
 席につくと、皆さん特にメニューを見ることもなく、おれにメニューを見せてくる。お客人ポジションで気をつかってもらっているのか、それとも自分の頼むもの既に決めているのか……どっちにしてもおれは何を頼んだらいいのかわからないのだが……。ぺらぺらとめくってみてもお品書きが上品すぎて、想像できる料理がぴんとこないのである。


「ん? どうしたミホーク、迷ってるのか? なんならわしが決めてやろうか!」

「鷹の目、ガープに頼ませるな。ガープに頼ませると、こいつが食べたいものしか頼まんぞ」

「そうだね、これなんかどうだい? 旬のものが揃ってるよ」


 横からガープさんが、斜め前からセンゴクさんが、前からおつるさんが色々と教えてくれる。メニューをわざわざ開いて指し示してくれたおつるさんの案に乗ることにして、じゃあそれでと頷いた。するとセンゴクさんが店員を呼んで頼んでくれる。久々に誰かの作ったご飯が食べられるというのはありがたいものである。しかも多分これ奢り。ガープさんの優しさが胸に染みる。


「ミホーク、最近はどうじゃ?」

「どうもこうも、……特に話すようなことはないな」


 そらそうだ、おれは基本遊泳してるだけである。話題になるような人生は送っていない。たまにこうやって海軍のお偉いさんやシャンクスたちに誘われるか、はたまた七武海やら他の有名海賊やらに遭遇するか、あとどうでもいいやつらに絡まれるかだ。人との接触は基本的にひと月に一回どこかの店で店員と話せばいい方である。うわ……どこかの引きこもりみたいじゃないかおれ……。
 しかしふとその流れで思い出したのは、一番最近会った友人の姿だった。引きこもり並みにお世話になったのである。友人判定でいいだろうと思う。いやマジで友人だから。ほんと、友だちだから。


「そういえば先日友人に会ったな」

「んん!? ミホークお前友人がおったのか!」

「ガープ、なんて言い方だい」

「あっ、すまんすまん!」


 驚いてそんなふうに言ってくるもんだから、ガープさんはおつるさんにたしなめられていた。でも大丈夫やで……悲しいことにおれも自分に友だちいない自覚はあるから……。
 センゴクさんはため息をつきながら「それで?」と会話を促してくれる。おれは友人──もといアイスバーグに会ったときのことを思い出していた。アイスバーグとは棺船の整備以来、何度か会っては友人としての付き合いが続いている。長いときでは一ヶ月以上居座らせてくれるのでうっかり住み着きそうになってしまうのが玉に瑕だが、それだけアイスバーグの傍は居心地がいいのだ。


「滞在中は家で世話になっていたから多少家業の手伝いをし、暇さえあれば二人で飲み明かしていたような……」

「ほー、ミホークは酒好きじゃからなァ、その友人とやらは大変だったじゃろ!」

「そうだな、飲んでいる間に潰れて毎度おれがベッドまで運んでいた」

「うん……?」

「なんだ?」

「いや、なんでもないぞ。それで何か面白いことはあったか?」

「……そう聞かれると特にはないな。別段どこに出かけるわけでもなかったし、ただ二人でいる時間が長かっただけだ」


 実際、おれは久々の陸兼ベッド兼他人の作る飯のありがたみを感じながら、ひたすらだらだらして酒飲んでいただけだ。あ、そういえば今回はフランキーとも飲んだんだった。でもまあ、フランキーってある意味お尋ね者みたいなもんだし、それについては一言も言わない方がいいだろう。
 そんなことを考えている間に何故か静かになってしまった三人に首を傾げると、三人は顔を見合わせてそれからおれを見た。そのとき、それは恋人って言うんじゃ……と三人が思っていたことなど知る由もない。

ちぐはぐ交友関係

ミホーク(成り代わり)でおつるさん達とのほのぼの話@匿名さん
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