アイゼルネ・ユングフラウ番外編


 他人からものをもらう代表と言えばバレンタインだが、美少女と思われているおれが一番ものをもらうのはクリスマスだ。誕生日は親しい人しか知らないし、何かの口実にものを渡すとしたらクリスマスなのだろう。たしかにあげやすいけどね。だがおれがもらうのはすんごい量でな? 去年とんでもないものがいくつも入っていたので、今年からは先に保護者の誰かと一緒に開けることと相成った。
 去年はな、たまたまそこにいたクザンさんとサカズキさん、ボルサリーノさんにおつるさんというメンツでもらったケーキの箱を開けたんですけどね、開けた瞬間に異臭がしたよね。完全に精液ぶっかけてありました。うわ気持ち悪いと引く反面で、食ザーさせる気があるならもっと上手に隠せよ馬鹿かよと思ってしまった。おれがそんなことを無言で考えてる間に、ケーキは処分され、ケーキを渡したやつも処分されてましたよっていうことがあった。だから今年はそれはそれは警戒されている。まあ当然かなという気はしなくもないけどね、おれだっておれじゃない美少女にそんなもんを送り付けてくる輩がいるんだったら警戒するし守ってあげようって思うわ。


「じゃあこれから開けるよ」

「はーい」


 というわけで、今年はおつるさんと一緒に開封していく。大半のものが市販のお菓子やアクセサリー類で、一度開けられた形跡もないことから問題ないと判断された。言ったらなんだがアクセサリー類とかいらないんだよなァ、使わねェし。もらったもんは売りづらいし嵩張るし。そんななか、どうやらやばいものもいくつか出てきたようでおれが見る前に別の箱にそっと移動されていた。


「これは……ジンベエからだね」

「ジンベエさんから!」


 まさか郵送してくれたというのかあの人は! わざわざ!? おれに!!
 嬉しすぎて唇を緩ませていると、ジンベエさんなら大丈夫だと判断したのかおつるさんはおれに袋を渡してくれた。わくわくしながら袋を開けると、メッセージカードとお菓子が入っていた。メッセージカードには魚人島のお菓子である旨が示されている。女の子が喜びそうな光をきらきらと反射する色とりどりの飴のようだった。


「うわあ、綺麗ですねぇ」

「そうだね。食べるのがもったいなくなるくらいだ」

「でも食べないともったいないというジレンマが生まれますね」


 おつるさんと二人で笑いあいながら、つぎのプレゼントの確認に移る。ジンベエさんには今度いつ会えるかわからないけどお返しを用意しておこう。
 ぱぱっと分けているうちにおつるさんの動きが止まった。その顔はなんとも言えぬ苦いものだ。どうかしたのだろうか、と首を傾げていると包装紙を開き、またなんとも言えぬ顔をした。


「ドライフラワー、ですか?」

「これはプリザーブドフラワーだね」

「プ、プリ?」


 なんじゃそりゃ。聞きなれない言葉を頭の中で検索してみたがわかるわけもなく、目蓋をぱちぱちと開閉させていたら「特殊な液に浸して水分を抜いた生花さ」と教えてくれた。おれがわかったのはなんか高そうということだけだったが、とりあえず頷いておいた。おつるさんはがさごそとその花を確かめていたがどうやら怪しいところはなかったようで、おれの方にそれを差し出してくれた。


「クロコダイルからだよ」

「へえ、クロコダイ…………クロコダイルさん!?」


 おれをおもちゃか何かと思っているであろうドフラミンゴさんならともかく、クロコダイルさんがなんでまたわざわざ? 恩でも売っておこうってことなんだろうか。いやでもこれ恩ってほどじゃないしなァ……何が目的なのかはわからないが、ついていたメッセージカードを見るとつい笑ってしまった。


「何考えてんだかねェ……あいつも海賊だ。気を付けるんだよ」

「ええそうですね、ふふ」


 頷きながらも笑顔は消えなかった。だってメッセージカード、チェスの盤面書いてあんだもん。その盤面の駒は一手だけ動かしてある。家に帰ったらおれもメッセージカードを作り、何か贈るものを考えなくてはならなそうだ。文通でチェス対戦とはなんともお洒落なことを考えたものである。

海軍、七武海からクリスマスプレゼントを貢がれるメアリちゃん@匿名さん
リクエストありがとうございました!


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -