アイゼルネ・ユングフラウで現パロネタ


 ナマエという男はそれはそれは可愛い顔と華奢な肢体を持っている。男として可愛いのではなく、女にしか見えないという意味で可愛い。だから馬鹿な男が信じられないほどに引っかかる。
 そのためストーカー被害やら変質者やらに襲われることも多いナマエを、近所に住む警察官としてボルサリーノは見守ってきた。しかしボルサリーノもまた、ナマエが成長するにつれて馬鹿な男に成り下がってしまったのだ。小さいころはなんてことなく可愛い子どもというだけだったのに十代半ばからは危うい色気のようなものがちらほらと見え始め、十代後半には最早ナマエが悪いと言ってしまいたくなるほど、ナマエは魅力的に育ちすぎてしまった。けれどなんの因果かナマエもボルサリーノのことを好いてくれたため、ボルサリーノは合法的にナマエと触れ合える権利を手に入れた。……のだけれど、これはなんだろうか?


「あれ? ボルサリーノさん、昨日のこと覚えてません?」


 にこにこと笑うナマエは今日も可愛いのだが、如何せん状況がおかしい。二人でベッドに寝転んでいて、ナマエの格好は随分だらしのないものになっている。はだけた服装、乱れた髪、気だるそうな雰囲気。そして自身の痛む頭と全身の倦怠感。ナマエの二十歳の誕生日を祝ってからの昨夜記憶がぱったりとない。
 もしかするとこれは、やってしまったのではなかろうか。覚えていないだけに不安が胸中を渦巻いた。ボルサリーノは今の今までナマエに手を出すことなくやってきた。ナマエの妙な色気に当てられながらも成人するまではと自分に言い聞かせてきたのだ。だからその反動でやってしまったのでは、と思ってしまっても致し方のないことだった。


「あ、心配してますね〜。大丈夫ですよ、ボルサリーノさんはなーんにもしてないです」

「……オ〜、そうなのか」


 ほっと一息つけば、ナマエが子どものように楽しそうに笑った。ただそんな台詞が出てくる以上、ナマエも子どもではないのだろうけれど。ボルサリーノがもう一度息をついてナマエを見ると、ニンマリとその笑みを変えていた。


「ボルサリーノさんは、ね?」


 えっ、という顔でついナマエを見つめてしまった。それは暗にナマエは何かをしたということだ。一体何をされたのか、さっぱり覚えていない。首をかしげても口元に手を当ててみてもまるで答えは出てこなかった。
 「んふふ」と変な笑い方をしているナマエは実に楽しげで、子どもの頃を思い出してしまいなんだかとても気が抜けた。可愛がってやりたいというか、なんというか。「降参だよォ」と手を上げるとナマエは指を足の方に向けた。


「ヒント、ボルサリーノさんの下腹部」

「えっ」


 一体何をされたんだ、と布団をめくってみると、なんてことはなく普通にズボンを履いていた。が、身体を動かして初めて気がつく妙な倦怠感と鈍痛にボルサリーノの顔から血が引いていく。ボルサリーノが何を思いついたのか理解したらしいナマエが「ふふふ」とらしくない笑い方をしている。とてつもなく嫌な予感がじわりと湧いてくる。


「ごめんなさい、いただいちゃいました」


 声にならない悲鳴が出たような気がしたが、声になっていないので気のせいかもしれない。まさかそんなことになっていたとは思いもよらなかったボルサリーノは顔を真っ青にさせたが、ナマエは悪いと思っていないような笑顔のまま擦り寄ってきた。


「だってボルサリーノさんべろんべろんだったんですもん。こりゃあ据え膳食わぬは男の恥だと思ってやっちまいました!」

「ああ……うん……全く覚えてないんだけど、こういうときはなんて言えばいいんだろうねェ〜……」

「男の子なんでしょうがないよね、じゃないですか?」


 しょうがないよね、で済ませられる問題なのだろうか。というよりもナマエはボルサリーノに対し勃ったというのだろうか。普通では有り得ないところが痛んでいるため、間違いなく勃ったのだろうけれど信じられるわけもなかった。
 ボルサリーノは美少女にしか見えないナマエと違ってそこらへんにいるただのオヤジである。そんな相手によくぞまあ、という一種の感心さえ湧いてくるようだった。そんなことを考えながらぼんやりとしていると、ナマエがムッと眉間に皺を寄せていた。


「ボルサリーノ、なーんか疑ってるでしょう」

「いやァ、そんなことは」

「ありますよね、わかってますよ」


 何か疑われているということだけはわかったようでナマエの機嫌がほんのすこし下がってしまったようだった。けれどすぐ何かに気が付いたらしいナマエは口角をきゅっと上げたかと思うと、突然布団を思いきり投げ捨ててボルサリーノの上に跨ってきた。


「……何してるのかなァ〜?」

「思い出せないなら思い出させてあげようかなって」


 語尾にハートでもつきそうなほど弾んだ声でそう言ったナマエに、ボルサリーノのは顔を引き攣らせた。そういうのはいいから、と否定したいのは山々だったが、ナマエの唇で塞がれてしまってはそうもいかない。どこで覚えてきたのか問い詰めたくなるようなねっとりとしたキスを受けながら腹に当たる堅いものに苦笑いがこぼれた。──ああこれは疑う余地もないな。

アイゼルネ・ユングフラウが大好きなので、日記のクザンさんとの現パロみたいな感じでメアリちゃんが三大将かCP9の誰かとお付き合いして攻めてるお話が読みたいです!@匿名さん
リクエストありがとうございました!



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -