クロコダイルに構うドフラミンゴ成り代わりのハロウィン話


 風の噂でクロコダイルのところのカジノがハロウィンキャンペーンをしていると聞いて、わざわざからかいにやってきたのだが、まあこれが暑い。本当はいつも自分のためにならないことばかりしているべビー5を連れて来て甘やかしてやりたかったんだが、べビー5を連れてきたら間違いなくクロコダイルに何をされるかわからないので泣く泣く置いてきた。それでもせっかくだから誰か連れていこうと考え、おれが声をかけたというのに、どいつもこいつも真面目に暇じゃねェとか抜かすもんだから、デリンジャーを連れてきた。デリンジャーは末っ子気質がすごい上におれのこと大好きってタイプなので仕事をほかのやつに押し付けて来たから問題なかったのである。むしろ問題しかねェか。まあいい。


「若さま、ここが他の七武海のとこ?」

「ああ、ハロウィンイベント中で仮装してるとドリンクプレゼントしてくれるんだと。あとトリック・オア・トリートでチップ分けてくれるとかくれねェとか」

「あ、じゃああたしこのまんまでいいわね。闘魚のコスプレってことで通りそうだし」

「じゃあおれはドンキホーテ・ドフラミンゴのコスプレってことにすりゃあいいか」

「きゃはは! やだ若さま、それじゃあ本人よ」

「フッフッフ、お前も本人じゃねェか!」


 二人で仲良く楽しく会話しながらカジノに入るとそこには仮装したディーラーやらなんやらがいて、なんとも異空間だった。これだけ見ると完全に阿呆だが、おれのヒューマンショップでも似たようなことをやってるんだろうことは想像に難くなかった。
 「うわぁ色物」とデリンジャーが笑っていたがまったくもってそのとおりだ。それだけ本当に奇妙な光景だったのである。ただそれでも上品さを失ってないところはクロコダイルの賜物だろう。そうしてその当人がおれが来たことに気がついたようで露骨にげっという顔をしてみせた。それを顔に出してしまうあたり素直なやつだと笑ってしまったのは仕方ないことだ。


「よおクロコちゃん久しぶり」

「てめェ何しに来やがった」

「きゃは! 客に向かってすごい口の利き方!」

「……なんだこいつは」


 おれからデリンジャーに視線を移したクロコダイルは見慣れぬものを見る目でデリンジャーを見下していた。おれのファミリーになんて目をしているのかこいつは。デリンジャーの肩を抱いて引き寄せると、クロコダイルの眉間のシワが余計にひどくなった。


「フッフッフ、うちの可愛いファミリーのデリンジャーだ」

「どーも、よろしくしなくて結構でーす! きゃはは!」


 楽しそうに笑っているデリンジャーだが、完全にクロコダイルのことを見下している。なんというか両者見下し合うあたり、相性の悪いものを連れてきてしまったらしい。互いに相手を見下すタイプの強者だから仕方ないのか。
 デリンジャーは何かに目ざとく気が付くと、おれに手を出して金をせびってくる。何かやりたいものでも見つけたんだろうか。金を渡してあっちで換金だぞと教えてからクロコダイルに視線を戻すと、観察するようにこちらを見ていた。いつもおれのことを観察して弱みを握ろうと思っているようだが、その弱みとも言えるファミリーはかなり強いのでクロコダイルでも手こずることだろう。


「さてクロコちゃん、トリック・オア・トリートだ」

「あ? そのサービスは仮装してる方に限ってるんですよ、お客様」


 皮肉っぽく笑ったクロコダイルだったが、そもそもそれはここの店のサービスという意味である。トリック・オア・トリートの本当の意味を知らぬわけでもあるまい。にいっと口角を上げ、歯を見せるようにして笑うとクロコダイルは何か嫌な予感を察知したのだろう。さらりと砂になってすこし後ずさった。


「おいおい逃げるなよ。菓子がねェやつは悪戯されるのが通例だろうが」

「……てめェもしやそんなくだらねェことをしにここまで来たのか」

「そうだと言ったら?」

「馬鹿じゃねェのか」


 たしかにおれもクロコダイルがおれに悪戯するためだけに国に来たと言ったら爆笑した挙句、こいつは馬鹿だと思うことだろうが歓迎はするだろう。なにせ馬鹿げていて面白いからだ。でもクロコダイルはいまそうは思っていないようだ。完全に見下している。ということは根本的に考え方が違うのだろう。
 だがそんなこと今のおれには関係ない。糸を這わせて縛り上げようとすると砂になって逃げられてしまった。そうなってしまえばあとを追うのが面倒くさくなる。クロコダイルの方もきっと、おれの相手をするのが面倒になってしまったんだろうけれど。


「それじゃあ仕方ねェ、ルーレットでもやるか」


 おれを一人放置したことをきっとクロコダイルは後悔するはめになるだろう。ルーレットなら糸でつかんで好きなところで止めればいい。カード類でも糸を使えば大体相手のカードがわかるし、積み込みやらなんやら、イカサマと言われることなら大抵可能だ。そんな客がはじめっから金持ってるってのは悲惨な話だよなァ。
 いつものように笑顔を作りながら換金し、チップを持ってルーレットのところへ向かう。さて、どれくらいでクロコダイルのやろうが出てくるか一人で賭けでもしようじゃないか。

ドフラミンゴ成り代わりでハロウィンキャンペーン中のカジノinアラバスタに突撃する話@匿名さん
リクエストありがとうございました!



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