若誕「誰もが優しくなれる」のハロウィン話


 ドンキホーテファミリーでハロウィンパーティーをやることになったと聞いて、ロシナンテも準備に駆り出されることとなった。大きな損害がなかったことやナマエが間に入ってくれたこと、そして何よりボスであるドフラミンゴが許しているため、ファミリーの者たちとは良好とはいかないまでも、という仲が築けている。
 ロシナンテがいつものドジっ子を発揮して飾りつけの電飾に絡まっていると、グラディウスがパンクしそうになりながら怒っていた。


「てめェ、若の命令じゃなかったらとっとと追い出されてるってわかってるか!?」

「わざとじゃねェんだ! わざとじゃ!」

「わざとじゃねェ方が問題なんだってわかんねェのか!!」


 なかなか進まない準備に怒り出すのは致し方のないことである。ロシナンテ自身、自分が準備に向かないのはわかっている。何かと言えばドジを発揮して余計な手間を増やし、面倒なことになるのである。うう、と泣きそうになるロシナンテにあちらこちらからため息が向けられ、その中で付き合いの長い連中だけが笑っていた。
 昔ナマエと一緒に飾りつけをしたときには簡単にできたはずなのに。はあ、とロシナンテもまた自分にため息をついて、ふと気がついた。今日はナマエも来るのではないのだろうか。こういうイベントにドフラミンゴが大好きなナマエを呼ばないのはおかしい。……あれ、もしかしてこれって。
 ロシナンテの顔から血の気が引いた。もしかするとドジっ子であるロシナンテを準備にかり出したのはナマエの傍に近づけさせないためではないだろうか。慌てて大広間を出て玄関に向かうと、そこにはドフラミンゴとナマエの姿があった。ドフラミンゴが抱きついていてあわやキスというところでなければほっと安心していたところだろうに。やはりドフラミンゴはハロウィンに託けて悪戯を仕掛けるつもりだったらしい。仮に疑問をもたれたとしてもハロウィンだと言えばナマエは笑って終わらせてしまうだろうから。なんとも卑怯な方法ではないか。わざわざ音を立てて近づくと、ドフラミンゴがきつく舌打ちをしてナマエが朗らかに笑った。


「ドフィ、ナマエおじいちゃんから離れろ」

「あ? 嫌だね」

「ははは、ドフィくんは本当に甘えん坊のままだねぇ」


 違う、おじいちゃん違うんだって。多分おじいちゃんにしばらくくっついたままでいたらその人下半身に異常出るからな?
 そんなことを恩人のナマエに言えるわけもなく、ロシナンテはドフラミンゴとナマエの間に割って入り、ナマエを背中に隠すようにドフラミンゴの前に立ちふさがった。ひくりとドフラミンゴの唇が不機嫌に震えた。


「ロシー、なんのつもりだ?」

「ナマエおじいちゃんはおれが守る」

「おお、ロシーくんは随分と頼もしくなったねぇ。ありがとう」


 頼もしくなったと言いつつもいい子いい子と後ろから頭を撫でてくれる手に、ついロシナンテは照れながら頬を緩ませてしまった。ロシナンテが褒められている様を見せつけられたドフラミンゴの顔がこれでもかと不機嫌に歪む。そんな表情のままにロシナンテの肩を思い切りつかんだ。


「おいロシーいい加減にしろよ。ナマエは、おれんだ」

「ナマエおじいちゃんは誰のものでもないだろ! しっしっ!」

「……おれを犬みてェに扱うとはいい度胸だなァ」

「いひゃい!」


 ドフラミンゴは能力を使うようなことはせず、ロシナンテの頬をつねった。地味に痛いそれに、ロシナンテもドフラミンゴの頬に手を伸ばしぐっとつねった。「いへぇ!」とドフラミンゴが言ったが、ドフラミンゴがやめぬ限りロシナンテも離す気はなかった。二人で子どものように引っ張り合っているとナマエが頬を緩めて嬉しそうに笑った。


「仲直りができて本当によかったよ」


 その声が染み入るようで、ドフラミンゴとロシナンテの二人は顔を見合わせ、同時にその手をゆっくりと離した。

「誰もが優しくなれる」で、お菓子をくれても悪戯するぞ!なドフラミンゴさんと、おじいちゃんの貞操は俺が守る!なロシナンテさんと、二人とも仲直り出来て良かったねぇ、なおじいちゃんの楽しいハロウィンパーティー@匿名さん
リクエストありがとうございました!



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