性的(R17)にお下品な要素を含みます。苦手な方はブラウザバック推奨です。


 ドフラミンゴはおそらく、ありとあらゆる意味でナマエという人間を愛している。だが初めに奴隷などと言ってしまったことが悪かったのだろう、ナマエとドフラミンゴは長い間相思相愛ながらもナマエの卑屈さも相俟って関係がなかなか進むことはなかった。生い立ちを考えれば仕方ないことだが、ドフラミンゴを思えば思うだけ自身を卑下するナマエはそういったことを許容できる精神状態ではなかったのだ。ファミリーとロシナンテを巻き込んだ紆余曲折を経て、どうにか恋人になることができたのは奇跡だったのかもしれない。
 ただし、またそこからが長かった。昔はあんなに簡単に抱き締めたくせに、手を繋ぐのにひと月、抱き締め返すのにもうひと月、そして触れるだけのキスができるようになるまでなんと半年もかかったのだ。ナマエ曰く、『神聖なものに触れるのには勇気がいるのです』である。何を馬鹿なことをとドフラミンゴは何度思ったことだろうか。ドフラミンゴが神だろうがナマエが汚かろうが、ドフラミンゴがナマエを認めたのだからそれだけでいいだろうに。
 それでもドフラミンゴはナマエのことを辛抱強く待ち続けた。こんなにも自分に忍耐があるとは微塵も思っていなかったが、ナマエが好きだったからこそ耐えてきたのである。若いために熱を持て余すこともあったが他の何かに走ることも当然しなかった。ただ触れようとしただけで逃げられても怒りや寂しさを抑え我慢をした。そしていつしか限界を迎え、──ある日唐突に怒りを露にした。


「お前はおれのことをなんだと思ってんだッ! 神だのなんだのと言う前におれはお前の恋人になったんじゃねェのか! 好きなやつと触れ合いたいキスしたいセックスしたいって、そんなふうに思うことがおかしいってのか!?」


 逃げようとしたナマエを部屋に連れ込み、ドフラミンゴは怒鳴り散らしていた。ダメだとわかっているのに普段のようには口が止まらなかった。ナマエに避けられることが限界だったのだ。
 狼狽えながらもナマエはいつものように「おれは、汚い、ので、」と声を震わせた。付き合うまでに揉めたときと同じようにドフラミンゴは何度もナマエの言葉を否定した。だというのに、今度ばかりはナマエも聞き分けが悪かった。自分の神を汚すわけにはいかないとでも勝手にと思っているのだろう。あまりにも頑ななナマエの態度にドフラミンゴはギッと睨み付け、癇癪を起こした子どものようにナマエをベッドへと突き飛ばしそのまま押し倒した。


「そうかよ、ならおれが綺麗にしてやる」

「い、いけませ、」


 何を言っても首を縦に振ろうとしないナマエに、いよいよ悲しくなってくる。だというのになぜナマエの方が苦しそうな顔をしているのだろうか。もうどうにもこうにもやるせなくなってしまう。制御の利かなくなった感情が涙となりサングラスを伝いナマエの顔にぽたりと垂れると、この状況がいつもの押し問答ではなく何かとてつもなく大変なことになっているのだとようやく気が付いたようだった。ナマエはこちらが心配になってしまうほど顔を真っ青にさせ、声を震わせる。


「違うんです、ごめんなさい、きらわないで……」


 多分、それがすべてだった。ナマエの気持ちは大きく分けてふたつだ。ドフラミンゴのためになりたい、そしてドフラミンゴと共にいたい。恋人同士として触れ合いたいというドフラミンゴの望みを叶えればそのどちらも達成されるというのに、ナマエの中ではドフラミンゴのためにならないことなのだろう。


「好きだからこんなこと言ってんだ。嫌いになるわけねェだろうが」


 ドフラミンゴは己が矜持高い人間であるという自覚があるが、ナマエの前ではそんなことは些細なことだ。ナマエを手に入れるためだったら恥も外聞もどうだっていい。勝手に自己完結するきらいのあるナマエにはきちんと言葉と行動で示さなければ伝わらないのだ。
 ナマエは泣きそうな表情を作りながらも、ドフラミンゴの顔に手を伸ばした。その指先はわずかに震えていたがしっかりとドフラミンゴに届いていた。


「おれも、あなたに触れたい、です。……キスを、して、……抱いてしまいたい」


 はじめて示されたその意思にドフラミンゴはサングラスの奥で目を丸くさせて、それからナマエに笑ってやった。そんな泣きそうな顔などしなくてもいい。ナマエがあのときドフラミンゴに命をくれたように、ドフラミンゴもナマエに何かくれてやりたいのだ。いつものように笑い声を上げながらドフラミンゴはナマエにキスを送る。拒絶されるような気配は、すこしだってなかった。

 ・
 ・
 ・

 そうして初めてナマエとセックスをして以来、ドフラミンゴはその快楽に簡単に溺れた。好きな相手との行為だからなのか、それともナマエだからなのかわからなかったが、ドフラミンゴには些末な問題だった。今までもこの先もナマエ以外に身体を開くことなどあり得ないのだから、どうだっていいことだ。

「ん゛、あっ……は、…!」
「ドフラミンゴさま、」
「ナマエ、っん」

 ドフラミンゴが喘ぎ、縋り、達す度にナマエは頬を緩めた。情事にはまるで似合わない心底安心しきった顔で笑っている。ドフラミンゴの役に立てたことが嬉しいと、ドフラミンゴを悦ばせることができて嬉しいとナマエはとても優しく笑うのだ。そしてナマエはもっともっと悦ばせようとしてもはや責め苦といっていいほどの快楽を与えるのだけれど、ドフラミンゴはどんどんとナマエに嵌まっていくような気がした。
 だって、本当に嬉しそうに笑うのだ。親に褒められた子どものように、あどけない顔で。その度にドフラミンゴの胸は締め付けられるような思いに駆られる。安心しきったその顔が、好きで好きで堪らなかった。

いますぐ魅力をかんじたい

奴隷が死んだの裏設定にある恋人までやっとこ昇格したドフラミンゴと主人公のその後。そういう意味でめろめろ(下世話)な話@もちさん
リクエストありがとうございました!



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -