ボルサリーノさんとおれは、年齢差が結構あるが、お付き合いをしている。おれからアプローチをかけて、かけて、かけまくったら、結構簡単に落ちて来てくれたので、ちょっとちょろいところが心配だったりする。だけどおれを好いてくれているのだろうなァ、という瞬間もあるし、大丈夫だと思いたい。それから年上ぶって余裕そうにしているところとか、可愛いなァ、と思ったりするのだ。

 そんなわけでおれはボルサリーノさんにべた惚れである。何でもしてあげたいと思う。だがおれは割と察しが悪い。何かを望んでいるのはわかっても、何を望んでいるのかはわからない。頑張ってもそんな感じだ。

 何が言いたいかというと、先ほどから隣に座っているボルサリーノさんから送られてくるちらちらとした視線の理由が知りたいのだが、理由を聞いても教えてくれないのである。


「ボルサリーノさん?」

「……なんでもないよォ」


 なんでもなくても見てくれたらすごい嬉しいんだけど、それはそれ。これはこれ。質問するたびにわざわざ視線を逸らすってことは、多分、ただなんでもなく見ているわけじゃないんだろう。
 でもなんでおれの方を見ているんだろう。おれのことが好きだから見ている……ないな。それだったらもっとこう、弾んだ声で言いそうなイメージがある。おれのこと煽ってるのかな、みたいな声の、いたずらっ子のような声だ。

 ボルサリーノさんってそういうとこあるしな。余裕ぶった隙間から子どもっぽいところが覗いているのが最高に好き。仕事のときのオトナモードも好きだけど、プライベートのボルサリーノさんも好き。嫌いになる要素が一切ない。

 とりあえず見つめられているときは見つめ返すようにしてみたが、そうするとどんどんと視線がそらされてしまう。なんだこれ、楽しいぞ。
 しばらくそんなことをやっていたが、「やめてくれるかい」と結構マジなトーンで言われてしまった。

 諦めて一旦席を立ち、飲み物を入れに行くと、背中に突き刺さる視線の質が少し変わった気がしたように思えて振り返ってみる。ボルサリーノさんが不満げな顔でおれを見ていた。やはり何か思うところがあるらしい。……聞いても教えてくれないんだもんなァ。

 二人分の紅茶を持って戻ると、礼の言葉をかけられたが、全然ありがとうって感じじゃなかった。やっぱりなんかあるんだろう。まったくわからないが。


「ボルサリーノさん」

「……何」

「まったくわかりません。何かありますよね?」

「ないよォ〜」

「なかったらここまで露骨に見ませんよね」

「ないったら」

「そうは見えません」


 そんなしょうもないやり取りを数回どころか十数回繰り返していたら、ボルサリーノさんが完全に不機嫌な顔になってしまっていた。ないって言ってるじゃん、という顔ではなく、なんでわからないんだこの野郎とでも言いたげな顔になってしまっている。
 わかってあげたい。とはいえ、察しが悪いのは、わかりきったことだ。むしろ教えて欲しい。何故そう頑なにおれに察してもらおうと思っているのか。無理に決まってる。ため息をついて落ち込むと、ボルサリーノさんも思いっきりため息をついて、おれをまっすぐに見た。


「わっしが見てる意味、何にも思いつかないのかいィ?」

「……はい」

「じゃあわっしが見てて、何か思うことは?」

「おれ、ボルサリーノさんのことすごい好きだなって」

「それから?」

「そ、それから……?」


 触りたい、キスしたい、ぐちゃぐちゃに犯したい……?
 口にしてもいい言葉なのかわからなかったが、促されるままに言ってみたら、ボルサリーノさんはわなわなと震えだして声を張り上げた。


「そこまでは望んでないよォ!」

「ん……? ということは、……キスですね!?」


 勝手に結論付けて唇を奪ってしまったのだが、ボルサリーノさんは抵抗しなかったのでそれが正解だったようだ。なるほど、こんなふうに見つめられたときは、キスをしていいよっていう合図なのか。学んだ。次からは容赦なくキスさせてもらおう。
 とはいえ、ぐちゃぐちゃに犯したいなどと考えていたおれが、軽いキスくらいで止まれるわけもなかったので、次の機会が訪れるかどうかは微妙である。

年下恋人主にべた惚れてる黄猿さんのわかりにくいおねだり@匿名さん
リクエストありがとうございました!



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