ミホーク成り代わり番外編


 修行の途中、ゾロが怪我をした。小さな怪我はよくあることだったが、当たりどころが悪かったようで重傷と言える怪我を負ってしまった。言ってしまえば、おれの力加減ミスである。えいっと刀を振ったら、ずばんっとガラ空きだった腹が切れてしまったのである。ほら……斬撃って、飛ぶじゃん? 忘れてたんだよなァ……。
 おかげで重傷のゾロくんはベッドと仲良しになってしまったのである。本人は大丈夫だとか言って修行を続行しようとしたが、無理矢理ベッドに寝かしつけた。安静にしてもらわないと……おれのせいで死なれたら困るし……。

 とはいえ、おれが目を離せばすぐさまに起き上がろうとして傷を開くというハイパークレイジーアクションを起こすので、ずっと見張っているはめになっている。死なれたら困るからな。


「おい、どこへ行く」

「……トイレだよ。ほっとけ」

「ゆっくり動け。また傷が開くぞ」


 イラっとしたような顔をしていたが、ゾロには前科一犯どころか前科百犯くらいあるのだ。おれがこんなふうに話しかけて来ても仕方ないと思っているのか、苦い顔をしながらも文句を言うことはなかった。
 というかそもそものところ、余計なことをしないでさっさと傷を治した方が、途中で色々するよりも効率がいいのだが、ゾロには焦りがあるせいなのかそこらへんわかってくれないらしい。


「……戻って来ないな」


 トイレに行っただけでこんなにも時間がかかるものだろうか。……もしかしてあいつ、そのまま修行しに行ったのでは……?
 気が付いてしまったのでこうしてはいられない。慌てて廊下に出ると、うずくまるゾロの姿を発見した。床には転がった刀と滴った血。はい、確定。刀も持てないくらい弱ってんじゃねえか。
 ため息をつきながら近づいていく。ゾロは顔を顰めたまま、荒い息を繰り返している。この島には医者がいないんだから大人しくしとけよなァ、本当にもう……。


「抱え上げるぞ」

「な、っ!」

「暴れるな。傷が広がる」


 怪我人を俵のように担ぐわけにはいかないので、ゾロを抱え上げるとわずかに抵抗が見られた。お姫様抱っこはうすら寒いだろうが、これも全部ゾロくんが悪いんですよ? きみがアホなことするからこんなことになるんですよ? おわかり? 絶対わかってないよね?
 もう一度ため息をつきながら注意すると、ゾロは羞恥を耐えるような顔をしながらも抵抗を辞めた。そうだぞ、お前が悪いんだぞ。まあ、原因を作ったのはおれなんですけどね……。

 しばらくは本当にがっつり張り付いておかなければ治るものも治らないだろうな、と思いながら、ゾロの部屋まで歩いていると、ペローナに遭遇した。そして物凄い顔をしてこちらを見て来た。


「私の前でイチャイチャすんな」

「怪我人の看護をイチャイチャなどと言うのはおかしいだろう」


 何を言ってるんだこいつ、という目線を送ると、ペローナは唾を吐き捨てるような酷い顔をして去って行った。女の子なんだからそんな顔しなくても……。

ミホーク成り代わりとゾロか、又はアイスバーグさんが無意識イチャイチャして周辺の人が目を疑うような話@匿名さん
リクエストありがとうございました!



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