「……ジャブラ何やってんの?」


 部屋に戻ったら、ジャブラが、おれがもらったチョコレートを食べていた。マジで何やってんだろう。首を傾げていたら、その間にジャブラが口の中に入れていたチョコレートを嚥下した。ごくりと動く喉仏につられておれの視線も上下した。チョコレートの付いた唇を乱暴にぬぐったジャブラがようやくおれを見た。


「チョコレートは身体によくねェってのを聞いてお前のために食ってやってるんだ狼牙」

「いやチョコレートってイヌにこそよくないんじゃ……」

「おれはイヌイヌの実の能力者であってイヌじゃねェ!!」


 動物にチョコレートを食べさせてはいけませんってよく言うけどあれなんでだろうね。その理由がなんであれ、ジャブラはもう怒ってしまっているし、人間なので関係ないらしい。イヌの本能とかは身体に現れるけど、肉体とか体質とかは変わらないってことなのかな。悪魔の実って本当に難しいな。どうなってんだ。絶対食いたくねえわ。


「ていうか身体に悪いのならジャブラが食うんじゃなくて捨てたほうがよくない? イヌじゃなくてもジャブラの身体に悪いじゃん」

「……お前、自分を好いてくれるやつからもらったチョコレートをゴミ箱に突っ込むのか?」


 どん引き、とでも言いたげな目で見られても全然説得力ないっていうか。そんなチョコを口に突っ込んで食べているのは誰だって話だ。まあおれが外道なのは認めよう。外面がいいだけのゲスクズ野郎であることは認めてやってもいい。というか割りと誰もが知る事実だしな。


「要するに食い意地の張ってるジャブラは他人からもらった何が入ってるかわかんないチョコレートを食いたくなるほど甘党ってことね」

「ブッ」


 そうだろう。おれがゲスクズなのはこの塔において有名な話であるし、この塔でつまみぐいをした女たちは両手がいくつあれば足りるのかというレベルだ。何をしても心酔しきっている子もいるけれど、同時に恨まれてもいるからね? そんなおれのもとに送られてくるチョコレートがまともなわけないよね?
 ため息をついてから部屋を出て、口の中をゆすぐのに必要な水を入れたコップと吐き出すのに必要な桶を持って戻ってくると、ジャブラの顔色がよくなかった。毒なんて効かないんだし、多分何が入っていたのか想像して気持ち悪くなっているだけだろう。ブツブツと食わなきゃよかったと呻いているあたり、心から後悔しているようだった。馬鹿だなほんと。


「ほい水」

「……ありがとよ」


 苦いものでも食べたかのような顔をして口をゆすいでからジャブラは吐き出した。甘いもの食べてたくせにそんな顔するなんて馬鹿だな。でも今回はおれを気遣ってくれたわけだし、ジャブラには何かお礼でもしてやろう。


「お礼に変なもんが入ってないチョコレートでいい?」

「は? チョコレートなんかいらねェよ。つーかなんだ礼って……」

「んん? もしかして嫌い?」

「あんな甘いもん食えるか」


 ジャブラは今自分が何言ってるかわかってるんだろうか。うげえという顔を作りたくなるほど嫌いなチョコレートを、おれのためだけに食べてたってことだ。いや、最初っからそうやって言ってたんだけど。本当に馬鹿なんじゃないだろうか。


「おい、どうした」


 俯いてしまったおれの肩をジャブラが乱暴につかんで揺らした。顔を上げるとジャブラがぎょっとしたような顔になって、それからじわりと顔を赤く染めて視線をうろうろとさせ始めた。同じ男だろうが、そんな顔すんじゃねえ。


「ジャブラのせいで勃った」


 あんまりに可愛いことを言ったせいだ。責任とって。

お前の身体の為だと男主に送られてきたチョコを全部奪って食べる、実は甘いものは苦手なジャブラ。@匿名さん
リクエストありがとうございました!



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