バイトさんの1日番外編


「今月のシフトだ」

「はい、ありがとうございま……オーナー……あの、バレンタインに一日入っているように見えるんですけど気のせいですかこれ」

「今年のバレンタインは日曜、いつも以上に混雑する。そしてお前は暇だ。以上」

「アッハイ」


 それがオーナーとおれとの先月末の会話でした。バレンタインのシフトは朝から晩まで? ノー、そんな生易しいもんじゃねェぜ……朝から次の日の朝までの超過勤務だ! 労基に引っかっちゃうよオーナー! 体力的にもきついっていうか! しかもたしかにおれ彼女もいないし、なんもないけどさ! 決めつけられるとめっちゃ傷つくんですよ!?

 なーんて文句が言えるわけもなく、おれはその日もバイトにドナドナされていったのであった。

 されていった、なんて言ったけどまあ自分の足で歩いていったんだけども。断れないよな、給料いいし待遇も超過勤務以外は全然悪くないしアットホームな職場だし。広告でアットホームな職場って書いてあったら大体やべえとこだけど、ここはそんなことないし。超過勤務だけどな!!
 当然のことながら混んだ混んだ。途中キッドたちが来てくれて「可哀想なナマエくんにくれてやるよ」とチョコレートをプレゼントしてくれたわけだが……語尾に(笑)が隠しきれていなかった。馬鹿にされてたよねー! 当然だよねー! だってバイトしてるわけだし! 彼女いないし! キッドとかキラーみたいにモテねーし!
 ぐぬぬあいつら絶対に許さん。非リアの力を思い知れ、と思ったが、チョコレートを分けてくれる優しい友人たちなのでおれの心が醜いだけであった。悲しい。


「お疲れ様です」

「……ああ」


 くだらないことを考えながらバイトを終わらせ、一応オーナーに挨拶しに行くと、オーナーはまだ仕事をしていた。マジかよ。もう朝なんですけど。超過勤務だなんだって言ってるどあきらかにオーナーが一番超過勤務してるんだよな……この人働き者ってレベル超えてねえか? 休みの日とかないんじゃねえの。割りと心配になるんだけど大丈夫なのかな……まだ辞めるつもりないからオーナーに倒れられると困るんだけど。


「じゃあお先失礼しますね。オーナーも早く休んでくださいよ」

「うるせェ」

「倒れられたら困るんですからね」

「……これやるからさっさと帰れ」


 おお? なんかのお土産かな? 睨まれなかったから口喧しく説教垂れてみたら、ぽんと投げて渡されたのはチョコレートのようなものだった。英語が書かれていてよくわからないが、パッケージ的には洋酒入りのチョコレートのようだった。おお、なかなか嬉しいプレゼントだ。今日一日頑張った御褒美だろうか? 本当は従業員に配るためのお菓子を頭が回っていないからもらえたのかもしれないし、オーナーが気づく前にさっさと帰っちまおう。


「ありがとうございまーす。じゃあ帰りますんで」

「……ああ」


 扉を閉めて、貰ったチョコレートの包装を容赦なく破いた。誰かがここにいたらここで開けるのかと驚いたことだろうが、今いるのはおれだけなので気にしたりしない。眠い頭で特に考えもせずチョコレートを口の中に放り込んだ。うまい。

バイトさんシリーズ/付き合う前でクロコダイルが主人公へチョコあげたいが為再び1日コースのシフトを入れたりしてあの手この手で主人公へ渡す@匿名さん
リクエストありがとうございました!



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